【書評】文庫本千秋楽
惜しまれつつ亡くなった坪内祐三さんの、文庫本に対する徹底した愛情と気取りのない知性を感じられ、「知性」について深く考えさせられる。
2016年~2020年の間『週刊文春』に連載された「文庫本を狙え!」と1999年~2020年の間『本の雑誌増刊 おすすめ文庫王国』に掲載された「年刊文庫番」をカップリングして2020年<本の雑誌社>から出版された一冊。
「文庫本を狙え!」は170冊余りに及ぶ書評である。文芸書、哲学書、ノンフィクション、エッセイ、カルチャー本、スポーツ本など幅も広い。1冊当たり30行程度の文章だが中身は濃い。評論の域にとどまらず自分の人生と絡めて書かれているので坪内さんの“生きざま”も見えてきて味わいがある。
「年刊文庫番」は、冒頭から、心ときめく「新刊」が少なくなったという嘆きから始まる。過去作品のリイシューが「新刊」として発売される(特に大手に多い)パターンが多いそうだ。もちろん売れ線推し。99年からそういう動きはあったのだ。期待できるのは岩波文庫と講談社文芸文庫とちくま文庫(ちくま学芸文庫を含む)であると毎回のように述べられている。実際私もその辺が書店めぐりの際、足を止める文庫コーナーではある。現在、読書人口の減少や書店の減少が叫ばれているが、ただヒット作を繰り返すだけで新しい動きが見られない出版社側にも課題があるようだ。
「年刊文庫番」では特に優れた作品を俎上に上げ、今の世の中に「知性」がいかに必要か何度も繰り返されている気がする。そして「知性」とはどういったものかを坪内さんは教えてくれている。「知性」を常に念頭に置き日々過ごすのは困難かも知れないが、それが自分なりの考えを形成する基本だと思う。意識して取り組みたい。
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