

[120枚目] ● El DeBarge 『Second Chance』<Geffen>(10)
2010年にリリースされた本アルバムの、ひとつ前の作品『Heart, Mind & Soul』<リプリーズ>が出されたのは94年。アルバムを出さなかった(出せなかった?)期間は、兄のチコやDJクイックとのコラボ作品を出しはしたが、自らの作品に関する“沈黙”は続いていた。一方、私生活では08年に薬物関連で有罪判決が下され、2年の懲役期間の内13か月服役する事態になった。しかし、正に本アルバムのタイトル通り「セカンド・チャンス」を得るべく、10年にBETアワードでパフォーマンスを観せたりした後、待望のアルバム発表に至った。その道のりを考えると、深い意味合いを持つ作品である事が解る。
改めて経歴を見てみよう。61年、ミシガン州デトロイトに生まれたエルドラ・“エル”・パトリック・デバージは6人目の子供だった(子供は全部で10人)。父親は家族に虐待を繰り返す問題多き人物だったが、母親はゴスペル歌手で、やがて子供たちがデバージを組む際にはリーダーシップを取っていた。エルが13歳の時両親が離婚。彼は、子供の頃地元の教会の聖歌隊で歌ったりピアノを弾いたりしていた。やがてミシガン州グランドラピッズに引っ越して、叔父の教会で家族ともども演奏の機会を得たりしていた。
エルは兄ボビーと最も親しく、彼のヴォーカル・スタイルに憧れていた。ボビーは兄弟のトミーと一緒にスイッチに所属し、やがてヒット路線に乗った。その関係もありデバージきょうだいはベリー・ゴーディの前で演奏し、81年に<ゴーディ>から(当初は)デバージスという名称でデビューする事が出来た。デバージのメンバーは、女性のバニーの他、エル、マーク、ランディに始まり、セカンドアルバムでジェイムズが加わったが、87年にバニーとエルは脱退し、ボビーが加入した。エル自体は86年の時点でソロアルバムをリリースしている。エルのデバージ時代では、何と言っても最大のヒット曲「Rhythm Of The Night」(ホット100で3位)においての、甘くてよく通る歌声は記憶に残るところだ。また、家族の中では、エルひとりがデバージとしてもソロとしてもグラミー賞を受賞している。
エルのソロアルバムのチャートの動きを。ファーストの『El DeBarge』はR&Bチャート8位、ポップ・チャート24位、ゴールドディスク。セカンド『Gemini』(89年)はR&Bチャート35位。サードの『In The Storm』(92年)はUKの雑誌『Blues & Soul』のR&Bチャートで22位。4枚目の『Heart, Mind & Soul』は、R&Bチャート24位、ポップ・チャート137位。そして『Second Chance』は、R&Bチャート13位、ポップ・チャート57位の成績を収めている。シングルは、R&Bチャートで1ケタの曲だけ書いておくと、ファーストから「Who's Johnny」が1位、「Love Always」が7位。セカンドから「Real Love」が8位となっている。ちなみに本アルバムからは(1)「Lay With You」が20位、(13)「Second Chance」が41位となっている。
本盤は2枚組だが、Disc2はクリスマスソングが3曲のみ収録されている(1枚物もある。本盤はいわゆる“デラックス・エディション”に当たるだろう。そういう記載がなされているわけではないが)。2枚合わせて16曲が入っている。エグゼクティヴ・プロデューサーとしてピート・ファーマーとロン・フェア、共同のプロデューサーとしてエル本人が上げられている。ピートは、エルのマネージャーでもあり、ケンカ別れしたり仲直りしたりの関係のようだ。ロンは<ゲフィン>の会長でもあり、クリスティーナ・アギレラ、ブラック・アイド・ピーズなどを育てている。他に複数のプロデューサーが関わっているが、曲ごとにご紹介する。今回は(1)~(6)まで。
1. Lay With You
フェイス・エヴァンスをフィーチャリング。エルの声質も女性的なので、女性シンガーとのデュエットは混然一体となり、心地良いムードに満ちている。エル本人とロン・フェア、そしてマイク・シティ(カール・トーマス、ブランディ、デイヴ・ホリスターなどのプロデューサーでもある)がプロデュース。曲の作者はエリカ・コールター(後に<ワーナー>のA&R担当副社長)とマイケル・フラワーズ(マイク・シティ)。
2. Heaven
プロデューサーはオウサム・ジョーンズ(ポロウ・ダ・ドン)。ヒップホップ・グループなどで活躍した後、アッシャー、ファーギー、リル・ウェインなどをプロデュースしている。曲を書いたのは、3人組の女性ライター・チーム、フル・サークル+オウサム。ギターがポール・ドーソンの名でも知られるホット・ソース。キーボードがジェイソン・ペリー。ヴォーカルに浮遊感を持たせているが、演奏がパーカッシヴなので抑制は効いている。
3. Close To You
バックビートのリズムに軽やかに乗り、多重録音によるハーモニーも美しくキメている。ロン・フェアとマイク・シティがプロデュース、マイクはアレンジと作曲も実施している。
4. Format
50セントをフィーチャリング。プロデューサーはロン・フェアとクリスチャン・デイヴィス。曲の作者はクリスチャン+カーティス・ジャクソン(50セント)+ヴィクター・ウィルソン(スヌープ・ドッグやリル・ウェインをプロデュース)+A.ショウ+エル本人がクレジットされている。重低音の中、エルの声がきらめいている。
5. When I See You
ベイビーフェイスの抒情的なメロディーが優しい歌声にフィットしている。ベイビーフェイス(ケネス・エドモンズ)の他の作者として、エル+ロン・フェア+ミシュケ(ソングライティングとプロダクションチーム、アンダードッグスの一員)が上げられている。プロデュースはロン・フェア、リードヴォーカルのプロデュースとしてミシュケの名。ベース、ギター、ハーモニカ、ピアノ、ドラム・プログラミング、ヴィブラフォンをロン・フェアが担当している。
6. How Can You Love Me
曲の作者は、アヴィル・ブラザーズ(ボビー・ロス+イズ)、ジミー・ジャム(ジェイムズ・ハリスⅢ)、テリー・ルイス、エル本人。プロデュースはアヴィル・ブラザーズ。ボビー・ロスはベースとエレクトリック・ピアノとピアノを担当、イズはドラムスとパーカッションを担当している。ジャム&ルイスはヴォーカル・レコーデッドとも記載されている。ステディに刻み続けるリズムや、流れるようなオーケストラサウンドの中で、エルのソフトな歌声が安らぎを生む。



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