レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.110 (3)
[119枚目] ● スペンサー・ウィギンス 『フィード・ザ・フレイム : ザ・フェイム・アンド・XLレコーディングス』<Pヴァイン>(10)
※本文を書くに当たり、鈴木啓志さんのライナーノーツを大いに参考にしています。
最初に、前回分でご紹介した(8)「Love Works That Way」について。「65年に出たものはブートレグで、(本盤のものは)68年に録音されたものだろう」と書いたが、考えてみれば「65年に録音されたものがブートレグで出回っていたが68年に日の目を見た」とするのが正しい解釈だろう。改めて触れるまでもないかも知れないが、ひと言。
本CDは全22曲収録されていて、前回までで14曲お送りしている。従って最後の今回は(15)~(22)となる。尚、(18)(21)は音源が拾えなかった。
(7)「I'd Rather Go Blind」の裏面(70年) 。フェイム・ギャング後の録音らしい。何気ないダンス曲だが、ディープな歌唱とソウルフルな演奏は十分に楽しめる。AIに問い合わせたら、唯一チャートインした曲でR&Bチャート44位に到達したとの事。ジョージ・ジャクソンとミッキー・バッキンス(スワンパーズのギタリスト)の作品。
ファンキーなサウンドの中、重厚なヴォーカルを聴かせる。曲の作者は、スペンサーの他、アール・ケイジ、オスカー・スミス、ジョー・レイノルズがクレジットされている。(21)と一緒にシングル化(69年)。時代的にはフェイム・ギャングだが違和感もあると鈴木さん。
<フェイム>が権利を持っていた<ゴールドワックス>作品のひとつ。鈴木さんによればフェイム・ギャングの演奏。09年に<ケント・ダンス>からリリースされているコンピ盤『Goldwax Northern Soul』に収録されている。尚、前回分でご紹介した(13)「Let's Talk It Over」も同盤に収録されている。クイントン・クランチ作。いちだんと迫力を増したヴォーカルが炸裂する。
18. Hit And Run
聴いていて心がざわめくようなファンキー・ブルース。(3)「This Love Is Gonna Be True」(4)「Holding On To A Dying Love」(10)「Make Me Yours」と並ぶ本盤で初登場の作品。ジョージ・ジャクソンとダン・グリーアが書いた。フェイム・ギャング以後。
本タイトルで鈴木さんの元に送られたテープとは内容が違うらしい。ホーンやストリングスが抜け「半分の良さも出ていない」と述べられている。<ケント・ソウル> から2007年に『Can't Be Satisfied (The XL And Sounds Of Memphis Story)』というコンピ盤がリリースされてており、こちらにも収録されている。これは<Pヴァイン>盤も出ている。哀感あふれるバラードにこれでもかと歌声を乗せる。熱唱中の熱唱だ。これで半分なら・・・。
静かな立ち上がりから次第に盛り上がるが、冒頭の歌い出しから力強さを感じるのはさすがだ。フェイム・ギャングの演奏。<フェイム>権利下の<ゴールドワックス>作品。
21. Love Me Tonight
カントリー・シンガー、カーモル・テイラーの持ち歌。カーモル版は<ゴールドワックス>系の<ティミー>からリリースされている。さらに2010年発の2枚組CD『The Complete Goldwax Singles (Volume 3 1967-1970)』にも収録されている。この盤にはスペンサー・ウィギンスも「Soul City USA」など8曲収録されている。濃密な歌声が、カントリー系の曲調に伸び伸びとした雰囲気をもたらす。
バート・ラッセル作、ソロモン・バーク61年のヒット曲。フェイム・ギャングの演奏。鈴木さんの推察ではフレディ・スコットのヴァージョンに近いとの事だが、確かに全体のテンポや硬軟織り交ぜた歌い口はバークより近いかも知れない。
しなやかながら重量感もあり、強烈なシャウトでトドメを刺す。完璧という言葉はたやすく使いたくないが、聴いている途中の興奮度、聴き終わった後の満足感はそうそう味わえるものではない。「完璧なソウル歌手」に出会えた我々は幸福だ。
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