レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.95
[104枚目]●ラティモア『アイル・ドゥ・エニシング・フォー・ユー』<マラコ/ウルトラ・ヴァイヴ>(83/15)
※本文を書くに当たり、出田圭さんのライナーノーツを大いに参考にしています。
オリジナルは83年。私が持っているのは、2015年「ザ・トゥルース・オブ・サザン・ソウル」の副題で企画された『マラコ・ディフィニティヴ・コレクション』シリーズの1枚。後に18年に『マラコ1000・ベスト・セレクション』に名を変えたシリーズである。おそらく18年盤で購入したら、帯が2種類付いていると思われる。
ラティモアは、<マラコ>時代も有名だが、その前の<T.K.>傘下の<グレイズ>時代も定評がある。そのあたりも鑑み、経歴をたどっていこう。39年、テネシー州東部のチャールストン生まれ。本名は、ベンジャミン(ベニー)・ウィリアム・ラティモア。幼少期はバプティスト教会の聖歌隊に所属していた。ナッシュビルでの学生時代から、本格的にキーボーディストとして演奏活動をはじめ、スティーブ・アライモなどに帯同した(アライモはラティモアのアルバムをプロデュースもしている)。マイアミ・ツアーの際にヘンリー・ストーンの注目を浴びて、<T.K.>の専属ミュージシャンとして働くこととなった(初レコーディングは65年)。自分名義の初録音は、<グレイズ>発でTボーン・ウォーカー「Stormy Monday」のカバーだった(73年)。同年にリリースされた1stアルバム『Latimore』にも収録されている。
チャート上の動きは、74年「If You Were My Woman」(90位)を皮切りに同じ74年の「Let's Straighten Out」が1位、75年には「Keep The Home Fire Burnin'」が5位、77年「Somethin' 'Bout 'Cha」が7位など、全キャリアでまとめると、86年までに13曲がチャートインしている(いずれもブラック・チャートで内ポップ・チャートにも入っているのが2曲)。アルバムも2作目『More, More, More, Latimore』がブラック・アルバム・チャート13位を記録している。尚、今回ご紹介のアルバムは、ブラック・アルバム66位、R&B/ヒップホップ・チャート67位の成績である。
<グレイズ>には6枚のアルバムを残したが、80年代初頭に<T.K.>が休止(のちに復活)した為、配給関係にあった<マラコ>に移籍した。本盤は<マラコ>での2作目となる。<マラコ>では傘下レーベルも含め9枚のアルバムが発表されている。尚、ヘンリー・ストーンとは縁が切れず、のちに共同でレーベル<LatStone>を立ち上げ、2007年以降3枚のアルバムをリリースしている。
ハードなブルース・ロック調でスタート。デニス・ラサールが<ABC>より76年に発表した曲(表記は「Hellfire Loving」)。同年のアルバム『Second Breath』にも収録されている。
一転して王道サザン・ソウル。こもり気味の低音に、大人の男のせつなさを感じる。ジョージ・ジャクソンの作品だが、本人の録音は無いようだ。
かつての名曲のセルフカバーとなる。語り口調のミディアム・テンポが心に浸透していく。しかし、以前のヴァージョンの方がよりディープに感じる。O.V.ライト、グウェン・マックレー、ミリー・ジャクソン、B.B.キング、エタ・ジェイムス、クラレンス・カーターなどのカバーがある。
フレデリック・ナイトの作品。本人の録音は不明。美しいバラード。
ダイナミックに展開するタイトル曲。シャウトも若々しく熱い。カントリー系のドン・クックとロック・キロウ(ギタリストでもある)のコンポーザー・コンビの作品。「Hell Fire Lovin'」をB面としてシングル化されている。
この曲もドラマチックに歌い上げている。ホール&オーツによる75年作品。ホット100チャート4位に達して、同年のアルバム『Daryl Hall & John Oates』にも収録されている。
(7) (She Left Me With) One Shirt
やはり、サザン・ソウルの世界に入ると落ち着いて聴ける。ジョージ・ジャクソン+デヴィッド・ローズの作品。「You」のB面でシングル化されている。
(8) We Don’t Make Love Anymore
ハートウォーミングな歌い口である。サビの部分では切なさも混じる。<マラコ>のシンガーにも多数曲を提供している、フランク-O・ジョンソンの作品。自身もシンガーだが、この曲は歌ってはいないようだ。
エグザイルというカントリー・ロックバンドが80年にリリースした曲。82年にアラバマがカバーし、ビルボード・ホット100で18位、カナダのチャートでは1位に輝いている。作者はエグザイルのメンバー、J.P.ペニントンとマーク・グレイ。ラストにふさわしい盛り上がりを持つ曲だ。
正直、<グレイズ>時代の方がサウンドの乗りが良い。<マラコ>サウンドに否定的な意見も確かに多い。だが、ラティモアの歌唱は落ち着きだけでなく、力強いシャウトも聴けて、一定の成果を上げている。
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