コパを巡る想い
マーヴィン・ゲイの『アット・ザ・コパ』<Hip-O>。ライブが収録された65年といえば、マーヴィンがスタンダードアルバムを出していた頃。62年に<モータウン>入りし、ソロで名を成した後、64年から女性とのデュエットアルバムを(彼の本意ではなく)立て続けに出すというか出さされます。それに対して「俺がやりたいのはこういうのだ」とばかりに自己主張した結果のスタンダード集だったんですが、リズム&ブルースファンも<モータウン>もその手の音楽は「想定の範囲外」で不評に終わっています。
私も持っていますが、最初聴いた時ガクッと来たのを覚えています。
後で紹介するサム・クックもそうですが、彼等のフェイバリットの中にはナット・キング・コール、フレッド・アステア、フランク・シナトラといった人達も入っているのは厳然たる事実です。
この『アット・ザ・コパ』でもマーヴィンのクルーナー的側面が強く表出し、実に気持ち良さそうに甘く小粋に歌っています。ソウルファンとしては、バックのオーケストラサウンドは閉口ですが、彼の気持ちを知っているだけに複雑です。
http://www.youtube.com/watch?v=xaAnZxFkgtg
さて、マーヴィンの一年前64年、サム・クックも同じ場所でライブ盤を創っています。
サムの『アット・ザ・コパ』もソウルファンには評判が悪く、私も持っていません。彼のライブなら『ハーレム・スクエア』で十分というのが私も含めた大方の評価です。
しかし、今回サンプルを聴いたんですが、そんなに悪く無かったですね。
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1972779
ツボにはまった所の「ゴスペル唱法」が『ハーレム・スクエア』を髣髴とさせる瞬間も有ります。総体的に見て『ハーレム』が上だとは思いますが、そんなに悪いアルバムではないなあと思いました。「風に吹かれて」が完全にサムの歌になっちゃってるよ。
コパ、コパと風水みたいに言ってますが正式名称は「コパカヴァーナ」。今は違うでしょうが当時は高級白人クラブ(NY)です。
両方のアルバムに通じる、微妙な違和感の原因は、多分そういった所にあると思います。マーヴィンやサムが歌いたかった音楽でも、果たして聴衆が聴きたかった音楽なのでしょうか?加えてこの頃は一番黒人暴動が頻発していた時期・・・そんな事まで考えなくてもと仰る向きも有るでしょうが、あえて考えながら聴くと、何だか歌声も切なく思えます。
しかし、ソウル・ミュージックのスタイルが確立され始めた頃でもあります。あらためて、サム・クック、マーヴィン・ゲイの偉大さを思い起こす一助にはなりそうです。
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