[82枚目]●ボビー・ブランド『トゥー・ステップス・フロム・ザ・ブルース』<デューク/MCA>(61/01)
問答無用の大名盤。何度もリイシューされている内、私が所有するCDは、2001年に<MCA>名義でリリースされたもの。オリジナル盤に2曲のボーナストラックが付け足されている。
御大は、30年メンフィス近郊のローズマークという街に生まれる。48年にメンフィスに移住、ゴスペル・グループやビール・ストリーターズで活動。初レコーディングは、51年<モダン>にシングル1枚、続いて52年<チェス>にシングル1枚残した後<デューク>入り。73年<デューク>が<ABC>に買収されると<ABC>へ、79年<ABC>が<MCA>に買収されると<MCA>へ異動している。そして85年最終の地<マラコ>に移籍した。
一般的に<デューク>時代と<マラコ>時代が高評価で、全く異論が無いが、まず<デューク>時代のボビーをひと通り味わって頂きたい。本人の歌唱の素晴らしさはもちろん、サウンドの黒い味わいが何とも言えない。ちょっとカッコつけて「漆黒の音像」とでも呼びたくなるディープさだ。<マラコ>が劣るという訳ではないが。特に、デビュー盤である本作は必聴盤と強調しておきたい。57年~60年、シカゴとヒューストンでの録音。ウェイン・ベネットがギターの時は"ジャボ"・スタークスがドラム。クラレンス・ハラマンの時はソニー・フリーマンがドラムである。オーケストラのリーダーは⑪以外、ジョー・スコット。⑪はビル・ハーヴェイのオーケストラと記載されている。調べて判ったが、ジョー・スコットはこのアルバムに限らずデューク・サウンドの立役者として、ジョニー・エイス、ビッグ・ママ・ソーントン、ジュニア・パーカーの作品等でも存在感を示している。
①タイトル曲は静かな立ち上がり。アルバム全般に言えるが、オーケストラ・サウンドでも不必要に盛り上げず淡々としているが力強い。声質・唱法を生かしたサウンド創りが成されている。②慈雨のような音世界の中、ウェイン・ベネットのギターが軽く絡み、シャウト部分ではサックスがさりげなく寄り添う。③ややソウル的。サム・クックを連想する局面も。角度を変えるとソウル寄りのゴスペル・ソウルという感じか。ギターはクラレンス・ハラマン。④テンポが面白い。ドラムは"ジャボ"・スタークス。⑤妙に日本民謡のような感触もある。オーケストレーションのいなたさがそう思わせるのか。⑥結局「ボビーらしさ」という事になるが、包容力のある歌声から力のこもったシャウトといったボビーの魅力が一層味わえる。ギターはウェイン・ベネット。⑦落ち着いたブルースが続く。哀愁漂う名曲。
⑧クラレンス・ハラマンのギター。終盤のシャウトが全く破綻しないのが見事。⑨スタンダードの「聖ジェームス病院」。私はキャブ・キャロウェイ版を先に聴いたので、味わいの違いが新鮮だった。⑩これも憂いを帯びた一曲。ボビーでなければ凡庸に終わりそうだ。⑪モダン・ブルースにも繋がりそう。どうしてもギター主体のブルースが注目されがちなので取っつきやすいかも。クラレンス・ハラマン。⑫低音を効かせた導入部がディープさを演出する。⑬⑭が本CDのボーナス。⑬ウェイン・ベネットのギターのさりげなさにも注目。⑭ボビーにしては軽快な曲。⑥のフリップ・サイドとなる。これでアルバムを閉じるのもオツだ。
まずはデューク・サウンドを堪能してほしいと書いたが、実は、2ステップほどブルースの世界に踏み込んだ人ほど感じる部分が多いのではないだろうか。
① Two Steps From The Blues
② Cry Cry Cry
③ I'm Not Ashamed
④ Don't Cry No More
⑤ Lead Me On
⑥ I Pity The Fool
⑦ I've Just Got to Forget You
⑧ Little Boy Blue
⑨ St. James Infirmary
⑩ I'll Take Care Of You
⑪ I Don't Want No Woman
⑫ I've Been Wrong So Long
⑬ How Does A Cheatin' Woman Feel
⑭ Close to You
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