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『ブルース&ソウル・レコーズ』誌No.136

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チャック・ベリーとジェイムス・コットンの追悼をメインに。

付録CDは、YouTubeでも中々拾えないようなチャックの幅広いサウンドを取り上げている。

中河伸俊さんの連載拡大版は、彼の人生観を映し出した感もある「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」。いつも以上に曲に込められた作者の思いが伝わる。

アルバム・ガイドは専門誌らしく要領よくOK。

コットンの方は、来日時の高地明さんの思い出話が人柄も伝わってきた。大野木一彦さんとKOTEZさんの奏法解析も読むだけでも面白い。

スペンサー&パーシー・ウィギンス、ブルーズ・ザ・ブッチャーのインタビューも読み応え十分。

チャックの日本ライブから「勝手にライナーノーツ」、ワシントン・フィリップスの「ゴスペル・トレイン」などの連載物も好調。

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片隅04

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東京生まれで、戦後熊本に移住されたSF作家光波燿子さんの「黄金珊瑚」は絶品。

「人間家畜テーマ」というらしいが、じわじわと巨大化していく「結晶体」に人間たちが支配されていく。出会う人々をどこまで信用していいのか、自分自身は侵されていないのか。疑心暗鬼の世界が展開する。描きようによってはホラーなのだが、柔らかい文体で淡々と表現されているので読者自身が光波さんの世界に良い意味で自然とはまっていく。謎を含むラスト。

豆塚エリさん「ドールハウス」。自殺願望の強い主人公が死にきれず車いす生活となる。献身的な弟の介助で生活している。見ようによっては甘えのカタマリの主人公なのだが、彼女の目線で世間を見ていくと、特殊なようで腑に落ちる。

熊本にも面白い書店が増えつつある。その一つ、ポアンカレ書店の牛島漁さん「160人」。チャラそうな文章の流れにグッと締まる一文が組み込まれて、全体のリズムも含め読み甲斐あり。

高橋啓さん「ニコラ・ブーヴィエの詩」は、放浪の詩人、紀行作家ニコラの人物像への興味が尽きない。結局、詩人・作家というカテゴリーを超えた「放浪人」なのだろう。

絲山秋子さん「プログレ沼」は、マニアックな人種に共通の世界観が窺える。沼から抜け出せないのだはなく、抜け出さない。そこから世界を観察していく。と書くと大上段な感じだが、ペーソスと言えばいいのか極めて人間的な悲哀が描かれていると思う。もちろん哀しみに終始するのではなく、秘めて愉しむ心の充実感につながっている。舞台のバーも雰囲気良い。

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片隅03

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南阿蘇・ひなた文庫店主竹下恵美さんと、日田市の映画館・リベルテの支配人原茂樹さんは、地域に文化を根付かせようという前に、周囲との情のこもったコミュニケーションを取られている姿勢に感心した。

菅野樹さんの小説「ひとかりしちろ」は、時代小説。言葉が喋れない剣士七朗と混血の富松、本来は高い身分にあるあぐりという少女、それぞれの苦悩と強く生きる姿勢が伝わる。因縁の相手と七朗の対決も迫力あり。

葛引すい子さんの小説「ゆきしろの底」は、どこか宮沢賢治の世界に通じるような動物と人間が同一の立場で語られているような面白味がある。土俗的な世界観も魅力的。

ページの折々に現れる若松英輔さんの詩「言葉の護符」は、詩を読み慣れてない身にも深々と言葉が伝わる。

残念なのは、全体的に誤字脱字が目立つ。小説とかだと「表現」なのか間違いなのか迷う局面もあり。しかし、それを瑕疵とあげつらう気にまではならない。言葉や思いの力が伝わる雑誌ではある。

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片隅

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●雑誌『片隅01』<伽鹿舎>

http://kaji-ka.jp/

村上龍だったと思うが、何年か前に、これからの世の中は、小さなコミュニティーが沢山できるような社会になるといったニュアンスの事を述べられていた。

  私流に言わせてもらえれば、それは「群れ」みたいなものではなかろうか。同一の所属先や目標や趣味嗜好を持ったコミュニティーとは違い、何となく似たような者たちが集まっている印象だ。群れの大きな特徴は、互いの干渉度の低さだと思う。群れ以外の者はこの世に存在しないかの如く、自分の目の前に現れたら愚弄するが、同じ群れにいても全く仲間意識はない。

  本誌が「片隅」と名乗っているのは、社会が大きなひと塊ではなく、自分の居場所と他者の居場所のギャップが発生している現代社会の歪みをまず見つめよと言っているのではないか?もちろん、そんな事はどこにも記してないが、基本的な形がWeb文芸誌である事、取り上げる題材が、現代社会を投影したものから、SF調、ライトノベル調、伝統的日本文学調、詩など多彩である事は、居場所というのは本来自由なものであり、カテゴライズなんかされるなよという訴えのような気もする。自分の居場所と他人の居場所は、特徴は違っても同じ居場所であるという事だ。

  今の世の中で精神的にマズイ事のひとつは「他人の話を聞かないこと・他人を全否定すること」だ。自分の所属する群れ、片隅が全てだと思っている。いや、その段階でもないか。自分が全てだと思っているのか。

  文芸誌というと、文学趣味の人達の為の雑誌と思いがちであり、それは発行側にも若干問題がある。本誌のように、タイトルからして惹きつけて、内容的にも多彩であり、伝統も流行も見据えている雑誌は良心的だと思う。問題は、ここに集約されている言霊の力が遠い片隅まで届くかどうかだろう。

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心のファインダー

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●藤原新也著『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』<河出文庫>(12/単行本09)

判で捺したような日常の、微妙な変化によりドラマが生まれる、そんな短編集である。

  根底にあるのは、人間の美しさや愚かさ、強さ弱さを愛おしく思う気持ちだ。作品の中で藤原さんは、写真家の、被写体に対する姿勢について述べている。曰く、撮影中は被写体に深い感情移入をするが、終わった後に気持ちを引き摺ってはならないと。本書の各短編もそんな意識で綴られていると思う。

  民話やファンタジー的感触のもの、大人の恋物語風、人生の深みを味わえるもの・・・感情移入の度合いが等しく強くなければ、同じ輝きは得られないだろう。

藤原さんは、得意なジャンルを持つ作家というより、あらゆる対象に心のファインダーを当てる写真家的作家だ。当たり前の理屈のようだが、実行出来る人はそういないのではないか。

  別の言い方をすれば、写真のキャプションを拡げたような文章だったり、写実性の高い文章というのとも違う。 写真家の心根が溶け込んだ文章なのだ。

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コルシア書店の仲間たち

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●須賀敦子著『コルシア書店の仲間たち』<文春文庫>(95)

一人の人間には必ず一つの人生がある。

イタリア・ミラノに在住していた筆者は、周囲からは「キリスト教左派の集まり」とみなされている「コルシア書店」を中心として様々な人物に出会った。書店を立ち上げたカリスマ的神父から書店で働く人々や出入りする人々。貴族の末裔、移民、農家育ち、ユダヤ人、 各々立場や思想、生活様式は違っても「人生」の変遷は等しく訪れている。

端正な文章で風景や人物の描写が成されていく為、各章毎にスポットの当たる人物に人生に於けるターニング・ポイントが来ても大袈裟にならず深みが増す。
筆者自身も夫を亡くしているのだが、大きく取り上げず、夫の居る自分も夫の居ない自分も、ある種淡々と表現されているのが妙にリアリティーがある。

ヨーロッパならではの民族間の葛藤なども、一市民としての視点から理解させてくれる。

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無名の意味

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●渡辺京二著『無名の人生』<文春新書>(14)

http://www.honzuki.jp/book/239044/review/156809/

渡辺京二さんの本は初めて読んだ。飄々としたお顔と熊本在住である親しみから興味は抱いていた。もちろん、近代史を中心とした諸作のアカデミックかつ読み物的側面も気になってはいた。

  本書は「人生論」の範疇に入るのだが、自然体で、決して教訓的ではない。

  正しい自己愛とは自分を甘やかす事ではない。間違った福祉やケアが管理化に繋がっているなど、何となく多くの人が現代社会の問題として気付きつつ違和感に止まっている事柄を簡明に説明されている。

  最も重要なのは生きる姿勢だろう。「世界」には二種類ある。実際に存在する地理的社会と、自分が生きていく上での自分中心の世界だ。自分中心とはいえ、名を売ろうとか出世しようという考えを無くし、真摯に努力する。たとえ苦しい境遇でも努力する。そして、人間いずれ死ぬのだから、死の瞬間まで生き切る。

さまざまな「人生論」で語られてきた事かも知れないが渡辺さんの立ち位置から述べられると腑に落ちる。

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人間らしい人間同士の関わりの物語

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●高瀬正仁著『とぼとぼ亭日記抄』<萬書房>(16)

小説だが、著者の“思い出”が下敷きとなっている。大学生時代の著者は極端な人嫌いで、友達もいなかった。個性的な、屋台のラーメン店店主・村澤との出会いが、彼の毎日を充実したものに変えた。

  鮮明な記憶を元に綴られる日々は、読む者を温かく包み込む。しかし、単なる人情話に終始しない。著者の仕送りを当てにして、借金を返さないといった、非常識な人物像も浮かんでくる。

  著者はそれでも店主に惹かれ続けている。とんだお人好しではあるのだが、「惚れた弱み」みたいな感覚なのだろうか。村澤の、非常識を常識として貫き通す破天荒な部分に強がりや照れも感じている。また、非常識は非日常にも繋がり、目立たず生きてきた著者にとっては世界が広がり、それも堪らぬ魅力だったのだろうか。

だが、村澤の悪行三昧がエスカレートし、結婚生活の危機を迎える。村澤の為にもなり、彼のせいで悲しい思いをしている人の為にもなりたいと奮闘する著者は、人間的に成長していく。互いの立場から頼られる存在となる。

  終始飾り気のない文章もこの辺りから佳境に入り、飾り気のない分抑制が効き、文字を追う速度も速くなる。終盤は、福岡の大学院に進む事で、手紙と電話のやり取りが主となり、読者としては、相手の様子が判りにくくなる分、展開が謎に包まれた感じもあり面白い。

  思い出語りと微かな光明でラストを迎えるが、結局は人情話・・・人間らしい人間同士の関わりの物語である事に気付く。人生、それに尽きる。

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偉くない「私」が一番自由

音楽もそうだが、文章もスイスイと頭に入るタイプの書き手がいる。米原万理さん、佐藤優さんもその範疇だ。このお二人が「盟友」とは知らなかった。ロシア繋がりではあるだろうが、今回佐藤さんが米原さんのエッセイ等を編纂した文庫本の「まえがき」を読むと、真剣で温かくユーモラスな文章そのものの付き合いであったのが判る。

http://hon.bunshun.jp/articles/-/4728

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偉くない「私」が一番自由  米原万里 佐藤 優編  文春文庫

http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167905989

しかし、読書メーターの評判は今ひとつか。

http://bookmeter.com/b/4167905981

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アメリカの光と影は、どちらも濃密である

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●『物語アメリカの歴史 超大国の行方』<中公新書>(91)

https://www.chuko.co.jp/shinsho/1991/10/101042.html

アメリカは何につけ「あけすけ」なんだろうな。曖昧さを許さない。

  美しい部分も醜い部分もストレートに提示する。ごまかしもごまかしとして押し通す。

  初期の大統領は将軍上りが多いとか。戦争の勝利者がヒーローとして奉られる。しかし「戦争」といっても元々そこに住んでいたインディアンやメキシコ人を追い出すもの。どうひいき目に見ても正義の戦いではない。これでは人種差別も平気なはずだ。

このあけすけさ、良い方向に進むか悪い方向に進むかで状況は変わるだろう。魅力を感じると共に辟易する、ある意味人間臭い国だ。

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