[96枚目]●エルモア・ジェイムズ『ザ・スカイ・イズ・クライング : ザ・ヒストリー・オブ・エルモア・ジェイムズ』
※本文を書くに当たり、『ブルース&ソウル・レコーズ』誌 No.150 (19年12月号)のエルモア・ジェイムズ特集記事を大いに参考にしています。
編集盤も数多く組まれているエルモアだが、本盤は、<ライノ>が93年にリリースしたもの。一番の目玉は<トランペット>に録音された、最初の「ダスト・マイ・ブルーム」が収録されている点だろうか。全体的には51年~61年に発表された曲を集めている。
エルモアの録音デビューは、51年サニーボーイ・ウィリアムソンⅡの作品に参加した所からだ。33歳の時だが、それまで10年間ほど演奏活動は行っていた。サニーボーイとのセッションの3回目に、エルモアのリーダー録音が持たれた。それが本盤①となる。一般的にイメージされる豪快な「ダスト・マイ・ブルーム」とは感触が違う。ギターのフレーズは、サニーボーイのいなたいハープに合わせるような、訥々とした印象さえ受ける。但し、ヴォーカルの迫力は十分にある。51年11月に発売され、52年1月には南部で火が点き、4月には全国R&Bチャートに上っている。最高位は9位。
因みに、①のB面はエルモアではなく、ボボ・トーマスの「キャットフィッシュ・ブルース」だ。それでいながら両面とも名義は Elmo James となっている。
②は60年<チェス>のシングル盤。ホームシック・ジェイムズのギター、ジョニー・ジョーンズのピアノ、J.T. ブラウンのテナーサックスなどがサポートしている。緩やかなギターだが、ヴォーカルの熱量は相変わらず凄いものがある。聴く方も力が入る。③は53年<フレアー>発シングル。ジョニー、J.T.の他、ランサム・ノウリングのベースとオディー・ペインのドラム。強烈なスライド・プレイが堪能出来る。④は54年の<フレアー>シングル。アイク・ターナーとキングズ・オブ・リズムが参加している。ジョニーとオディーの名も。「ダスト・マイ・ブルーム」にヒットの芽が出始めた頃、<モダン>へ移籍し、アイクとの縁が出来ている。リズム&ブルースの感覚も残したブルースで、ギターとヴォーカルがよく絡んでいる。⑤は53年<フレアー>シングル。アイクがピアノで参加している。お決まりのブルーム調だ。というか、この年のセッションから新生エルモアが誕生したようだ。「ダスト・マイ・ブルーム」も録音されたそうだが、マスターが消失したらしい。ピアノも活きが良い。⑥はジョー・ターナー&ブルース・キングス名義で、当然ジョーが歌っている。全体のサウンドは完全にエルモア・ワールド。53年の<アトランティック>シングル。R&Bチャート6位。ジョニーも参加。⑦は53年録音だが、69年<チェス>のアルバム『フーズ・マディ・シューズ』に収録。ジョニー、ランサム、オディー、J.T.の鉄壁の布陣。ストレートなブルースで、サックスやピアノも良い味を出している。ブルーム調以外のエルモアのギターも良い。⑧も『フーズ・マディ・シューズ』に収録。メンバーは②と同じ。同アルバムは私も持っていて、この曲は特に好きだった。⑨57年<チーフ>シングル。<モダン>時代とは味わいが違う。モダンを辞めたのにサウンドはモダンになっている。エルモアはヴォーカルのみのようで、若きシル・ジョンソン(ウィリー・ジョンソン名義)がギター、エディ・テイラーがベース・ギター表記、ウィリー・ディクソンがベース、フレッド・ビロウがドラムだ。ソリッドなギターがめくるめく。⑩60年<ファイア>シングル。ジョニー、オディー、J.T.にホームシック・ジェイムズがベースで参加。エルモア・ブルースのひとつの完成形だ。聴き応え十分。⑪54年<フレアー>シングル。メンバーが特異。大人しめな曲だ。
⑫は②のフリップ・サイド。ブルーム調ではあるが、ややゆったりと展開している。⑬は61年<ファイア>シングル。ニューオーリンズ録音だ。ビッグ・ムース・ウォーカーのピアノ、サム・マイヤーズのハーモニカなど。エルモアは違反行為を頻発し、音楽家組合から資格停止処分を受けていた為、ニューオーリンズに赴き秘密裏に録音したという何ともなエピソードだ。ハープも入り、ギターも素朴に爪弾き、<トランペット>に先祖返りしたようなテイストがある。⑭61年<スフィア>シングル。ジミー・スプルーイルがギター、ホームシックがベースなど。スライドの間合いが絶妙だ。⑮60年<ファイア>シングル。⑭と同メンバー。爆発的な曲ではないが、ギターは聴き応えある。⑯は⑬のフリップ・サイド。メンバーも変わらず。ロックンロール的な疾走感が痛快だ。⑰57年<チーフ>シングル。ウェイン・ベネット、エディ・テイラーという豪華さ。後は、ホームシック、ジョニー、オディー、J.T.というお馴染みの連中。純黒ブルース。漂うサックスに絡むギターが光る。⑱は⑰と同年のシングルだが、番号は違う。ウェイン・ベネット参加。⑰と似たような展開だ。ゆったりとしたギター・リフも決まっている。⑲は⑭などと同メンバー。60年<ファイア>シングル。見事なダンス・サウンド。⑳も⑲と同じ。番号は違う。スローではあるが、変化のあるギター・プレイは流石。㉑は60年<フラッシュバック>シングル。ポール・ウィリアムズがバリトン・サックスで参加。スタートがやや変則的なブルーム調。メンバーのせいか一体感は乏しい。
エルモアというと、サウンドのイメージからか太く短く生きたような感じがするが、ブルームダスターズというメンバーに恵まれた一方、色々なミュージシャンとも関わりを持った事に気付かされた。それでいて、芯は変わり続けない。それが多くの人に愛されている所以だろう。
① DUST MY BROOM [TRUMPET 146]
② The Sun Is Shining
③ Hawaiian Boogie
④ Sho' Nuff I Do
⑤ Please Find My Baby
⑥ Big Joe Turner - T.V. Mama [feat. Elmore James]
⑦ My Best Friend
⑧ Madison Blues
⑨ Cry For Me Baby
⑩ The Sky Is Crying
⑪ Sunnyland
⑫ I Can't Hold Out
⑬ Look On Yonder Wall
⑭ I Need You Baby
⑮ Done Somebody Wrong
⑯ Shake Your Money Maker
⑰ The 12 Year Old Boy
⑱ It Hurts Me Too
⑲ rollin & tumblin
⑳ SOMETHING INSIDE ME
㉑ Standing At The Crossroads
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