ジョン・コルトレーンとバド・パウエル@<ブルー・ノート>
●ジョン・コルトレーン『ブルー・トレイン』<ブルー・ノート>(57)
※本文を書くに当たり、小川隆夫さんのライナーを大いに参考にしています。
<ブルー・ノート>唯一のコルトレーン作品は、面白い経緯から生まれている。55年マイルス・クインテット入りした当初は、テクニック不足を指摘されていたものの、56年の「マラソン・セッション」で実力を発揮し名を成すに至った。マイルス・ディヴィスのグループでの"成長"からのストレスか、麻薬に手を染めてしまった。当面の金が必要なのをカーティス・フラーに話した所、<ブルー・ノート>なら前金をくれると聞き、ストレートには言い出さなかったが、どうにか金は手に入れた。57年になり<プレスティッジ>と契約する段取りになり、契約時に<ブルー・ノート>で一枚作るという条件を出したとの事。実はアルフレッド・ライオンは契約話を忘れていたようだが、コルトレーンは律儀に(というか金貰ってるんだから当たり前だが)約束を守った形となった。
マイルス・クインテットでの同僚、ポール・チェンバースのベース、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムに、トランペットのリー・モーガン、ピアノのケニー・ドリューというメンバーで固まりつつあった所、おいおい、俺も入れてくれよと言ったかどうか知らないが<ブルー・ノート>入りの"功労者"カーティス・フラー(トロンボーン)も加わる事になった。楽器が重ならなくて良かったなぁ、という問題でもないか。
結果的にフラーの加入で、サウンドの厚みは増している。私は特にブルース好きなので、バンド・サウンドに魅力を感じがちな面がある。各人のソロワークの素晴らしさは勿論なのだが、ソロの背後や、ソロがブレイクして、全員でテーマを奏でる部分のアンサンブルにも強く惹かれる。テーマも耳に馴染みやすく、全体の曲構成がよく組み立てられていると思う。
●バド・パウエル『ザ・シーン・チェンジズ』<ブルー・ノート>(58)
※本文を書くに当たり、原田和典さんのライナーを大いに参考にしています。
ポール・チェンバース(ベース)とアート・テイラー(ドラム)とのトリオ。以前聴いて気に入った、レッド・ガーランドの『グルーヴィー』と同じ二人である。ピアノ・トリオとなると、例えば前述のコルトレーン作品に比べ、主役のバド・パウエルにスポットが当たり過ぎるように思え、実際に彼のプレイに耳を奪われがちだが、曲の雰囲気に変化があるので聴き応えがある。アート・テイラーのドラミングのタイム感の功績も大きい気がする。
バド・パウエルには、持病の苦難がつきまとうイメージがある。記憶力の減退が激しく、演奏の途中で何の曲を演奏しているのか判らなくなる事もあったという。アルフレッド・ライオンは、そんな彼に親身になって根気強く接し、「ジ・アメイジング・バド・パウエル・シリーズ」を5作完成させた。他社の録音ではオハコの再演作が目立ったものの、<ブルー・ノート>作品は全て書き下ろしという話を聞くと、ライオンの信頼に対するバドの気概も感じ取れる。
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