ソウル・ジャンクション
●ロン・ヘンダーソン・アンド・チョイス・オブ・カラー『ソウル・ジャンクション』<チェルシー/Pヴァイン>(76/20)
※本文を書くに当たり、JAMさんのライナーを大いに参考にしています。
本盤の発行経緯については投稿済みだが、再度概略を。本作は、ロスアンゼルスの<チェルシー>レコード発なのだが、経営破綻と同時期のリリースだった為、市場にはプロモ・コピーぐらいしか残っていない状況。幻の名盤のひとつと呼ばれる所以だ。しかし、80年代(正確な発表年が不明なのも何とも)に入り、海賊盤として<チョイス・カット>から出たロン名義のシングル「ジェミニ・レディ」(これは83年)を加えてリリース。これもまたレア盤化。更には05年、英<ソウル・ジャンクション>から『ジェミニ・レディ』なるCDがより求めやすい状況で出ている(調べたらAmazonにもあった)。今回のPヴァイン盤は、オリジナルに「ジェミニ・レディ」とそのフリップ(つまりチョイス・カットと同じ内容)を加え、更に74年のロン名義のシングルが加えてある。
ロン・ヘンダーソン以外のヴォーカリストは、リース・パーマーとウィリアム・ブリトン。両名ともソロ作品はない様子。因みに、キーボードのデューク・ホールにシングル1枚(チョイス・カット)。デュークはオリジナル盤の共同プロデュースとアレンジも担当している。
さて、内容。拙い連想ではあるが、2つの「ジャンクション」を感じた。ひとつはロン・ヘンダーソンの歌唱力。基本はテナーなのだが、ファルセットも素晴らしい。そればかりでなく、リキを入れた時にはダミ声シャウトまで繰り出す。まさに歌声ジャンクション。もう一点は、ジャンルのジャンクション化。基本的にめくるめくスウィート・ソウルなのだが、ノースキャロライナのシャーロットを拠点にしていた事で、ニューオーリンズとのパイプもあり、アラン・トゥーサン作品を2作取り上げている。また、ファンク、ロックの感覚も匂う。因みにグループ名の「チョイス・オブ・カラー」は、インプレッションズの曲名から取られており、インプレッションズ的な声の重なり(基本ではあるが)も関連付けられるかも知れない。
とにかく①の高揚感は図抜けている。この1曲を聴く為だけに買っても後悔しないはず。というか、買いたくなるでしょ。①よりややテンポを落とした②、サザン・ソウルのような出だしの③(歌ウィリアム・ブリトン)、いずれも素晴らしい。④(歌リース・パーマー)と、⑥がアラン・トゥーサン作。ニューオーリンズの薫りプンプンだが、アルバムの統一感は全く崩れない。⑤はロック・バラード寄りかな。ロニー・グリーンなる人物の作品⑦はちょっとサイケ調のソフト・ロックというか、ブレッドにドアーズが混ざった感じ。⑧は安心の一曲。ベタかも知れないが、このベタさが堪らない。⑨シンコペーションの効いたファンク曲。オリジナル盤はここまで。⑩も素晴らしいが、フリップ・サイドの⑪(音取れず)も泣ける。このシングル高いだろうなぁ。もうひとつ音が取れずに残念だった⑫「バッド・サイン」は、スワンプ・ポップみたい。ニューオーリンズにかなり寄ってる。⑬は⑫のインスト版なので、よりスワンプ感が強い。リトル・フィートみたいだ。
内容に関係ない話をひとつ。私は福井県敦賀市で仕事をしていた時期があった。既に黒人音楽漁りはやっていた。わりと大阪が近かったので、何度か訪れたりした。たぶん、音楽雑誌だったと思うが、福井市にあるフラミンゴ・レコードが、好みの物が揃いそうだという情報を得た。福井県は東西に長い。敦賀市から福井市までそこそこ掛かる。結婚間もなく、まだ子供が幼児で、周辺に身寄りのないヨメさんは子育てでストレスが溜まる状態。ひとりでレコ屋巡りともいかないので、旅行のついでに寄ってみた。品揃えは予想以上。当時ガイドブックに載っていた「幻の名盤」クラスもボチボチ有った。むやみに買えない中、レニアー&カンパニーと、本盤(もちろんブートレグ)を手に入れたのは今でも憶えている。この2枚は良質なソウル盤で、あまりモダン・ソウル系を持ってなかった私の愛聴盤となった。今回聴いてみて、やはり既聴感は少なからずあった。フラミンゴさんはその後何度か立ち寄った。スポンジ様の、CDのディスク用下敷きを必ず付けてくれていた。今回調べたがHPなどは停止中。しかし、Facebookには昨年付けで訪れた人のコメントがあり、グーグルマップで調べたら「営業中」にはなっていた。個人的に懐かしい一枚、よくぞPヴァインさん、復活してくださいました。
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