レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.80
[89枚目]●テイシャーン『オン・ザ・ホライゾン』<OBR/デフ・ジャム/CBSソニー>(89)
※本文を書くに当たり、石黒惠さんのライナーを大いに参考にしています。
私が持っているのは日本盤で90年のリリース。<デフ・ジャム>が、コンテンポラリー・ミュージック専門のレーベルとして立ち上げた<OBR>発となる。OBR=オリジナル・ブラック・レコーズの略だそうだ。テイシャーンの他には、オラン・"ジュース"・ジョーンズやアリソン・ウィリアムズが所属していた。私は3人とも好きで、ヒップホップ感覚を保ちながら歌物としても魅力を持つシンガー、ミュージシャンだと思う。特にオラン・"ジュース"・ジョーンズは一番シックリ来る。もちろんテイシャーンも好きで、本企画の69番では3rdアルバムを取り上げた。そこでも触れたのだが、本盤こそ彼の代表作として名高いのは言うまでもない。
①メリハリのあるリズムにソフトな歌声を漂わせている。タイトルからしても、訳詞を読んでも「社会問題」をテーマにしているのが判る。徐々にヘヴィーになる過程もポイント。②「ホワッツ・ゴーイン・オン」の一言で始まり、キング牧師の演説もサンプリングした、これも社会派の一曲。③座りの良いリズムにキャッチーなフレーズが乗っかっている。「前向きに行こう」という、ある種「応援歌」だ。④黒人の家庭問題に目を向けた曲。淡々とした繰り返しだが、ここでもリズム・パターンが根幹となり、飽きる事など無い。⑤も④に類似してリズム・パターンがガッチリ支えている。⑥ソウルフルなバラード。⑦リズミカルだが、鼓動のようなバスドラムがベースになっている。
⑧ライナーで「古いスタイル」と表現されているように、確かにオールドな薫り。⑨落ち着いた感じのミディアム乗り。⑩"同僚"アリソン・ウィリアムズとのデュエット。「Live on Earth」と記され歓声も聴こえるのだが、サウンドの一部のようにも思える。アリソンの歌声はクールでキュート。2人の声もよく合っている。⑪も「応援歌」と言える内容。⑫ソウルⅡソウルを想起した。因みにソウルⅡソウルの代表作も89年、よりサウンドが派手なフォスター&マッケルロイの代表作も89年、ガイが88年、クラブ・ヌーヴォーが86年という、そんな時代だった。⑬ジェイムズ・ブラウン讃歌。JBサウンドやヴォーカルを新味を加えて再現した一作。
最後に総括しておくと、シンコペーションの効いたリズム・トラックが魅力の最たるものだと思うが、あまりドタバタした感じではなく、スイング感を醸しているのが好印象だ。更に、改めてよく聴いてみると、シンガーとしての実力も確かだ。歌い口も、エモーショナルではないが味わいがある。スムーズに聴けて気持ちが温かくなる。
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