レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.71
[80枚目]●キム・ウェストン『グレイテスト・ヒッツ・アンド・レア・クラシックス』<モータウン>(91)
<モータウン>の女性歌手は「ダイアナ・ロス至上主義」のあおりを受けて目立たない人が多いかと。キム・ウェストンも61年~67年の在籍中、ヒット曲はあるもののアルバムはお蔵入りの憂き目に遭っている。但し、マーヴィン・ゲイとのデュエット・アルバムは出ている(66年)。マーヴィンの相方としてしか見られていなかったのかと勘繰りたくなる。確かに①「イット・テイクス・トゥー」がR&B4位の好成績。しかし、ソロ作の②「テイク・ミー・イン・ユア・アームス」も4位である。本盤では①⑤⑪⑮がデュエットで、確かに悪くは無いのだが、ソロ作の方が魅力は味わえると思う。
では、彼女の最大の魅力は何か?私が思うに「声の伸び」ではないだろうか。声自体にも潤いと張りがあるが、グーーッと声を伸ばすとパワフルというより、温かく包み込まれる感触がある。逆に言えば<モータウン>お得意のノーザン・ビートに必要な、キレの良さはあまり感じられない。ちょっともたつく感じさえある。それに比べて歌い上げるタイプの曲はシックリくる。アップ曲がダメとまでは言わないけれど・・・。
代表曲①②に続く③も典型的モータウン・サウンド。④から徐々に落ち着いてくる。スタンダード曲のデュエット⑤。マーヴィンも得意な分野だ。甘く優しく歌い込む。切り替わってのキムの歌い出しの浮遊感が何とも魅力的。繰り返し楽しめる。本盤におけるデュエット曲は「替わりばんこ」に歌う体裁がほとんどで、タミー・テレルとのデュエットみたいに声を合わせた感じは⑮ぐらい。それでも⑤の替わりばんこは秀逸である。マーヴィンのデュエット遍歴からいくとメアリー・ウェルズ→キム・ウェストン→タミー・テレルの順番。ウィキペディアに拠ればキムとのデュエットの成功が、タミー・テレルへと繋がったとの事だ(タイプの違いはあると思うが)。
⑥は女性コーラスがやや過剰。肝心のシャウト部分に被り過ぎと思える。⑦は落ち着いた展開。女性コーラスも⑥に比べれば抑え気味。⑧もモータウンらしい一曲。彼女の魅力が十分伝わるという意味で好曲。⑨も彼女らしさがよく生かされている。⑩スモーキー・ロビンソンらしい軽快さ。⑪マーヴィン側の歌唱がどうも今ひとつかな?⑫H=D=Hらしいメリハリの効いたミッド・スロー。⑬⑭モータウンらしい愁いを帯びている。⑮前述の通り両名の声の合わさりが聴き応えに繋がっている。⑯落ち着いた雰囲気の曲だが「彼女ならでは」という部分は乏しい。⑰は⑯より盛り上がり、存分に声の伸びが味わえる。⑯⑰はキム・ウェストンがコンポーザーに名を連ねている。⑱ドラマチック度はより高まる。シャーリー・バッシーとか思い出すが、このパターンは彼女にはよく合う。⑲曲としては今ひとつメリハリに欠けるが、哀愁味が感じられる。⑳大人しめな立ち上がりから、後半高まりを見せる。
<モータウン>後の彼女は<MGM><ヴォルト>などを経由し90年<モーターシティ>からアルバムを出しているのが今のところラスト。20年には78年当時のデトロイトに於けるライブ盤が英<ノット・オン>からリリースされている。ダイナ・ワシントン・メドレーなども歌っており、なるほど彼女らしい。現在81歳である。
⑫ A Love Like Yours (Don't Come Knocking Everyday)
⑯ I'll Never See My Love Again
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