レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.72
[81枚目]●V.A.『グッド・トゥ・ザ・ラスト・ドロップ』<ファンタスティック・ヴォヤージ/フューチャー・ノイズ>(09)
60年、ロンドンで発足した<エンバー>(ember)レコードの作品集。61年~75年の作品が収められている。自身の名を冠したジャズ・バンドのピアニストで、ジャズ・クラブの経営者でもあるジェフリー・S・クルーガーが発起人だ。英文ライナーで正確には読み取れないが、デトロイトの<GM>スタジオとも関係があるようだ。因みに、本コンピ盤をリリースしている<ファンタスティック・ヴォヤージ/フューチャー・ノイズ>もロンドンの会社である。
①ジーン・マクダニエルズの作曲で、69年<アトランティック>よりレス・マッキャン&エディ・ハリスが発表。本曲は71年のリリース。同名の米ロック・バンドもあるようだ。内容は、快調なイントロから一貫してクールだが、十分に熱い。ジャズ・エリアで取り上げられたのにも納得がいく。17年英<アウタサイト>からはB面別曲でシングル盤が出ている。両方ともディスク上のレーベルは<GM>。②聴き憶えのある楽しい曲だ。アシュフォード&シンプソン+ジョー・アームステッド作品。ジョーは64年~67年の間アシュフォード&シンプソンと曲創りをしていたそう。65年のリリースだが、同じ年に<ABC>からザ・ヤム・ヤムズというガールズ・グループが発表している。というかそちらが本家。ブラザーズ・グリムはまごう事なき一発屋のようだ。③は61年と記載してあるが、discogsによれば65年。シングル「ダンシング・ジェニー」のB面曲。④ザ・カジノスは写真で見ると白人の9人グループ。64年彼らの地元<テリー>レコードから出ており、<エンバー>盤は67年となる。サム・クック風の一曲だ。⑤元はニューオーリンズのレーベルからリリースされている。温かみ有る一曲。58年、ディーン・マーティンが発表している。62年発。⑥女性コーラスやストリングスも含め安定したサウンドの楽曲。ミルト・マシューズのヴォーカルは絞り気味の声で強弱が効いている。終盤には灼けつくシャウトをチラリ。71年発。⑦<モータウン>の重要コンポーザーのひとり、ミッキー・スティーヴンソン。本曲と同じ72年<エンバー>にアルバムを残している。<ファンタスティック・ヴォヤージ>からもキャロル・ウッズと並んでCD化されている。モータウン・サウンドとはまた違うドラマチックな構造を持った曲。歌唱は可もなく不可もなく。⑧エステル・アクストンの息子チャールズ・"パッキー"・アクストンはマーキーズにも所属していて<スタックス>黎明期に名を残している。ザ・パッキーズはパーカッショニストのジョニー・キーズと組んだインスト・グループ。なかなか軽快な一曲。録音は<ハイ>スタジオでバーケイズのメンバーも参加しているそう。66年発。
⑨本盤に4曲収録されているミルト・マシューズINCの2曲目。スモーキーなギターが絡む中、⑥よりゆったりと歌われる。71年発。⑩は⑨に似たようなサウンドのギターが彩る中、ディー・エドワーズの潤いとメリハリのある声が響く。72年発。⑪女性シンガーが続く。キャロル・ウッズは高音が目立つが耳障りではない。ベース・パターンやギターのカッティングがクールにキマる中、颯爽と歌いこなす。71年発。クラレンス・ポール作。⑫デトロイト出身の男性デュオ。目指す所はサム&デイヴか。しかし、彼らほどのパワーは無し。その分ノリの良さは抜群。70年発。⑬モータウン・サウンドぽい。70年発。⑭三姉妹のジョーンズ・ガールズが競うように且つ溶け合って歌っている。絶妙なアゲアゲソウル。70年発。⑮ミルト・マシューズINC本盤3曲目はロック・テイスト。歌い出しがクラプトンを彷彿させるが、ギターはレイドバックせず弾きまくる。71年発。⑯は⑬に次ぎ登場。ファンキーな一曲。70年発。⑰は⑫に次ぎ登場。前の曲よりはデュオならでは感がある。70年発。⑱ディー・エドワーズ2曲目は⑩と同じシングル盤となる。ミッキー・スティーヴンソン、シルヴィア・モイ、ハンク・コスビーのコンポーズ。アルバム一枚丸々聴いてみたくなる充実の歌唱だ。72年発。
⑲ミルト・マシューズINC最後の1曲はややサイケ感あり。⑮と同一シングル。表裏ギターが活躍するという次第。⑳タイトルからしてディープなテーマを孕んでいそうだが、意外と聴きやすい。<コティリオン>にリースされR&Bチャート44位に。エド・ロビンソンは後に<アトコ>からシングルを2枚出しているとの事。因みに⑬⑯のフォーク・イン・ザ・ロード2曲の作者でもある。70年発。㉑ジョーンズ・ガールズの母親が登場。元々はデトロイトのゴスペル・シンガーだ。本曲は71年のリリースで、59年、ジャッキー・デシャノンが発表している。㉒そして再び娘たち。どの方か、力を込めるとちょっと母親に似ている。⑭と同一シングル、ここにもエド・ロビンソンの名が。とりあえず安定の歌唱だ。㉓最後はレジェンド中のレジェンド、ジョニー・オーティス!但し、往年のリズム&ブルースサウンドではない。息子シュギー・オーティス絡みでは仕方ないか。だが、サウンド的には悪くない。個人的にはもう少し締まった音だとピッタリはまる。75年発。
① Compared to What · Mr. Flood's Party
② The Brothers Grimm - Looky Looky
③ Jewel Akens Wee Bit More Of Your Lovin'
⑥ Milt Matthews Inc. - Oh Lord (You gotta help me)
⑦ Mickey Stevenson Here I Am (Single Edit)
⑨ Milt Matthews Inc That's What I Feel For You (Single Edit)
⑩ Dee Edwards– Why Can't There Be Love
⑪ Carol Woods - Baby Don't You Leave Me
⑫ Tony & Tyrone - Everyday Fun
⑬ Fork In The Road Can't Turn Around You
⑭ The Jones Girls - My Own Special Way
⑮ Milt Matthews Inc - Disaster area
⑯ Fork In The Road - Skeletons In My Closet
⑰ TONY & TYRONE - WHIP YOUR LOVING ON ME
⑱ Dee Edwards - Hurt A Little Everyday
⑲ Milt Matthews Inc - Can't See Myself Doing You Wrong
⑳ Ed Robinson- Hey Blackman - Part 1
㉑ Marry Frazier Jones - Put A Little Love In Your Heart
㉒ Jones Girls - Learn How To Love
㉓ Johnny Otis - Good To The Last Drop
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