レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.78
[87枚目]●ジーター・デイヴィス『ロスト・ソウル』<Luv N' Haight>(13)
ハスキー・ヴォイスとか塩辛声とか表現される歌手は多数居るが、この人は一段と強烈だ。悲痛な叫び声のようで深遠な迫力を感じる。感じるというか叩き込まれる。本CDはアメリカのリイシュー・レーベル<Luv 'N Haight>発だが、08年には<ソウルスケイプ>から同内容・曲順違いでリリースされている。私は知らずに2枚とも買ったが、それだけ反射的に手を出してしまうシンガーだと言える。
ジーター・デイヴィスは、42年テキサス州のKountze生まれ。残念な事に、84年42歳の若さで亡くなっている。アラバマ州バーミングハムにてアレン・オレンジが設立した<ハウス・オブ・オレンジ>がキャリアのスタート。本アルバムも同レーベル作品集である。71年に『スウィート・ウーマンズ・ラブ』というオリジナル盤が出ているが、今回ご紹介のCDの1~9曲目までがその内容となる。<ハウス・オブ・オレンジ>の後、<ルナ><セヴンティセヴン><エイス><サン・ベルト><MT>からシングルを発表、アルバムは83年<MT>からリリースしている。
①ホーンが先導するモダンな曲調の中、抑えた歌い方を見せる。いかにも導入曲らしい。②早い段階でディープな一撃。人間離れした、怪鳥のような、馬のいななきのようなシャウトを聴かせ、悲痛な願いを込めた強烈で切ない感情が伝わる。③④とディープなブルースが続く。④などボビー・ブランドが歌っても似合いそう。もっとも⑤や⑦でブランドの代表曲を取り上げており、自らも意識しているものがあるのだろう。⑤も⑦も、ボビー・ブランドはディープでありながら粋な部分も感じるが、ジーターはより泥臭く、一段階沈んだ所から歌っているように思える。⑤の終盤にはお得意のシャウトも聴かせ、バンド演奏と共に盛り上がる。⑥ファンキー・タッチ。演奏陣が表に出る。⑦にはしゃくり上げるような声もさりげなく入る。⑧はストレートなソウルだが、ジーターならではという部分は少ない。
⑨オリジナル・アルバムのタイトル曲となるが、こちらもブランド調。ホーン陣が良い仕事している。⑩インディー・ソウル系にありがちな乗りの良い曲。存在にもヴォーカル・スタイルにも「根が張った」ような所がある為、テンポの良い曲は今ひとつしっくり来ない(あくまで個人的感想)。⑪<ソウルスケイプ>盤はこちらをタイトルとしている。特にベース、キーボード、ギターが適度な緊張感を保つ中、盤石のジーター節を聴かせる。⑪のセカンド・ヴァージョンとなる⑫は、冒頭から1分以上語りが入る。これはこれで素晴らしい。B.B.キング、ボビー・ブランドの名前も語られている。うがいシャウトっぽい声も。ギターもナイス・プレイ。⑬⑭は明るくテンポのある曲。囁くような歌い口だが、⑩とは違い、リズムにはよく乗っている。⑮でブルースに戻る。中程度の"いななきシャウト"も。⑯ラストの曲もブルース。⑮⑯は風合いがやや違う。どっぷりディープではないが悪くはない。
① My Love Is So Strong For You
⑫ I'll Play the Blues for You (Second Version)
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