Cinema

【映画】『ボヘミアン・ラプソディー』

※ネタバレになると思いますので、映画未鑑賞の方はご遠慮ください。

パフォーマーとして輝く事を目指した、というよりスターになる確信が、フレディー・マーキュリーにはあったのかも知れない。自分の才能を信じ、一度成功しても甘んじる事なく、音楽的創造を続けた。自信に溢れた言動は、取りようによっては傲慢にも思えるが、成すべき事を成しているので、クイーンの他メンバーも彼を信頼し、全員の音楽センスは結集され、歴史的なロックバンドになった。
そんなフレディーの精神的な翳りは、自らがゲイである事に「気づかされた」時から濃くなってくる。多くの人物が彼の味方であるのに、性的嗜好に翻弄されるあまり、敵味方の区別が付かなくなり、刹那的な快楽をもたらす者や彼の名声を利用しようとする者だけが周囲に残る。メンバーと喧嘩別れしソロ作を作るが、彼を満足させる創造性はなく、その上、エイズという病魔が彼の喉元に死を突きつける。
最終的には彼の「真の友達・真のファミリー」が彼を目覚めさせ、「ライブ・エイド」での圧巻の復活ステージで映画は終わる。演奏される曲の歌詞には、彼の孤独と苦悩が投影されているが、我々は勝者だ!と高らかに宣言もする。曲調や歌い口のダイナミズムも魅力だが、歌詞内容にも多くの人が共感し、勇気づけられるものが込められていると改めて思った。
彼の一家はゾロアスター教徒で、劇中で父親が口にする「善い考え、善い言葉、善い行い」という教義は印象に残る。フレディー・マーキュリーは、つつましい生活、安定した人生は送っていないかも知れないが、自分に素直に向き合い、強く前進し、苦悩にバランスを崩しても他者の愛で立ち直り、多くの人に感動と精神の解放感をもたらした。抽象的な宗教の教義をそれとなく信じるより、具体的に自分の人生に活かし、他者に影響を与えた人物だと言える。

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音をさすらう心の旅

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蔦屋書店三年坂店で行われた『さすらいのレコード・コレクター』上映会へ行ってきた。

アメリカ人レコード・コレクター、ジョー・バザードの歩みを辿る52分の短編映画。一般映画館の公開があらかた終わった今も、ポツポツと上映会が各地で行われているようだ。
彼が愛する音楽は、かなり旧い。ロバート・ジョンソンを最後のブルース歌手と断言したり、「この辺が最後のジャズだ」と言うのが35年録音盤だったり、頑固にも程があると言いたくなる超頑固収集家だ。ロックに至っては、良き音楽を殲滅した諸悪の根源とされている。まぁしかし、これぐらい頑固だと逆に爽快だ。
自らの足で収集した宝物をターンテーブルに乗せ、鳴り出す音楽に全身を震わせるかのように乗り、少年のような輝く笑顔を見せる。音楽に興味のない人が見たら、異常な光景に映るんじゃないかと思える狂喜ぶりだ。
彼の行動や見解に導かれながら、流れる音楽に耳を傾けていると、この時代の「音」の力強さを今更ながら認識した。うるさい音ではなく、強靱という表現が似合う無駄な力の抜けた強い音なのだ。それこそがディープなサウンドなのではなかろうか。
レコードを追い求めるさすらいの旅は、はるか昔の音をさすらう心の旅でもある。この上なくロマンに満ちた旅だ。
19時からは福岡を拠点に活動されているハリケーン湯川さんのライブを堪能した。ジミー・ロジャースやエディー・テイラーを思わせる、いなたくもまろやかなギター・サウンドだった。その為、ジョン・リー・フッカー調のブギーも、雑然とした感じにはならず、一音一音に力がこもっているので、抜群の乗りが出来上がっている。これもまた真に力強い音なのだ。
エレキの弾き語り形式で、ヴォーカルもエモーショナルではあったのだが、前座で出られたご夫婦ユニットとセッションとなり、バックに回った時のギターが実にカッコイイ。曲の流れへの乗り方、繰り出すフレーズのフィット感、ブルース・ギターらしいブルース・ギターだった。
こういう時の過ごし方をすると、つくづく夢中になれる音楽を持てた幸せを感じる。
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【映画】『私はあなたのニグロではない』

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http://www.magichour.co.jp/iamnotyournegro/

黒人作家ジェイムズ・ボールドウィンをキーパーソンに、人種差別問題について深く考えさせられる作品だ。彼が強く主張しているのは「現実を直視せよ」の一点。確かに、差別主義者は差別の実態を正確に把握していない。知ろうとせずに、自分の立場を変えたくない為多数派の論理を主張する。その論理に基づく暴挙を正義と信じている。

象徴的な映像がある。ボールドウィンもその映像を観て移住先のフランスから戻ってきたという。南部の高校に初めて黒人として入学した女性徒を取り巻く白人高校生の群衆。その表情が薄気味悪い。侮蔑や嘲笑とも微妙に違う。もはや人間の表情ではない。悪魔だ。何が彼をそうさせているのか。闇は深い。

人種差別にもっとも効果的なのは、社会制度の改善ではない。差別者側の意識改革だ。しかも、自分自身で気づかなければならない。黒人でも白人でもアメリカ人でもない私らより、当事者の方が難しいだろう。悲劇の歴史を知り、自分の意識や生活をどう変えていくかだ。

それにしても怖いのは、自分自身も世の中の何らかの当事者である事。気づいていないどこかで、間違った意識や行動を取っているかも知れない。多角的な知識と熟考は重要である。映画の中に引用されていたアメリカのTVバラエティー番組のように、過剰な派手さと明るさに翻弄され、人として大事な部分を麻痺させてはならない。

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ブルース・ブラザーズ

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http://kakaku.com/item/D0062450002/spec/

『BSR』誌最新号は、ブルース・ブラザーズ特集。付録CDも、映画で取り上げたものばかりではないが、彼らの感覚に合う曲がセレクトされている。これは全部YouTubeで拾えそうだなと思いやってみた。

  映画の本国公開は80年、日本は81年。私はいつ頃観たんだっけ。動くキャブ・キャロウェイを楽しみにしていたような記憶もあるので、黒人音楽を本格的に聴き始めたのは85年ぐらいだからその辺かな?昔、熊本でもオールナイトでテーマに沿って映画を上映していた。ジョン・ベルーシ特集だったか、ジョン・ランディス特集だったか、そこで観たような気がする。音楽を楽しみにしていたのだが、コメディーとしてもカー・アクション映画としても一級品の印象を受けた。

最近、何事も「テンポ」が大事だなとつらつら思っているが、音楽、コメディー、アクションも特にテンポが欠かせない。この映画も次から次へと、笑い音楽笑い音楽カーアクションという風に展開され飽きさせない。勢いのある曲が多い60年代ソウルにもよく合う。また、ジョン・ベルーシは、落語でよく聞く「フラがある」コメディアンだ。それがストーリー展開の小休止や、次への助走みたいな役割も成していると思う。つくづく惜しい役者だ。

I Can't Turn You Loose - Otis Redding

https://www.youtube.com/watch?v=pOXq_vLCjco

ソウル・ファンからしても、ブルース・ブラザーズの持ち曲のような気が。アレサの「リスペクト」を聞いて「あの曲はもう彼女のものだ」とのたまったオーティス。果たして、この曲に関してはどう言ったでしょうかね^^

Sam & Dave - Soul Man (1967)

https://www.youtube.com/watch?v=8fS9-Yimdhw

Coasters "Riot In Cell Block No 9"

https://www.youtube.com/watch?v=EwiuNQ5SQpA

Messin' With The Kid - Buddy Guy & Junior Wells

https://www.youtube.com/watch?v=w4Tcm2FPKnc

King Curtis - Peter gun

https://www.youtube.com/watch?v=Io92RTVY4_Q

Ray Charles - Let The Good Times Roll

https://www.youtube.com/watch?v=pHGsz3FNq2k

レイが映画で演じたのは、次の曲。オリジナルで聴いてみよう。

The Five Du-Tones - Shake a Tail Feather

https://www.youtube.com/watch?v=XaKVs5mJ4Bg

Aretha Franklin think

https://www.youtube.com/watch?v=cGXU7268Z50

コミカルな設定を忘れる超絶シャウト!これに鳥肌が立たない人は体質異常だ。

Solomon Burke - Everybody Needs Somebody To Love

https://www.youtube.com/watch?v=7OKAlBC-XWQ

付録はウィルソン・ピケットだが、私はオリジナルがヨカです。

CAB CALLOWAY - Minnie the moocher

https://www.youtube.com/watch?v=u7ogK_unbqM

Big Joe Turner - Flip,Flop And Fly - 1966

https://www.youtube.com/watch?v=tLP6PScAYVk

映画の名場面の一つ、カントリー酒場で歌われたあの曲を最後に。もちろん、この人で。

Candi Staton-Stand By Your Man

https://www.youtube.com/watch?v=RbyStJWvaj

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孤独の力

【映画】『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男』

http://jamesbrown-movie.jp/


ジェイムス・ブラウンは、黒人音楽史上の最重要人物の一人だ。それに止まらず、黒人文化史に残る偉大な人物だ。 一人の人間が抱えるにはあまりにも大きなステイタスである。よく潰されずに最後の最後まで「JB」を貫いたと思う。

母親にも父親にも“捨てられた”少年時代。自分の力だけで道を切り開き、欲しいものを手に入れなければならなかった。「音楽があるから正気を保てている」苦難の道だった。しかし、ボビー・バードを始め、たくさんの人物の助けがあった。もちろん、JB自身に音楽の才能があったからこそと言える。自分一人で道を開拓した訳ではないが、JBの力がなければ道にならなかったのも事実だ。

JBは孤独だった。死ぬまでJBであった以上、死ぬまで孤独だった。妻もいて親友もいるが、彼は孤独であり続けた。孤独であった少年時代は、忘れるべき過去ではなく、彼の精神の支えにも似たものであったと思う。スターゆえの孤独ではない。彼はスター以上の存在だからだ。自分の孤独さと向き合える人間は強い。

映画は人生の時間軸に沿いながら、少年期とデビュー間もない頃の映像がしばしば挟まれる。彼本人の基本精神とJB音楽の基本精神が繰り返されて強調されていたように思う。音楽の話を書いておくと、底辺にあるゴスペルの高揚感、グルーヴとフィーリング、全ての楽器はドラム等々、JB音楽引いては黒人音楽を理解するキーワードが頻出する。あまり詳述するとネタバレになるがこの程度は敢えて書いておきたい。

黒人音楽ファンなら分っているが、ジェイムス・ブラウンは、ソウルシンガーとしても一流である。ファンキーさとかダンスプレイだけでなく、ディープなソウル歌手である。その辺りも本映画はよく表現できていた。全般的に歌唱・演奏シーンが多かったのもとても嬉しかった。

孤独がテーマの映画とまでは言わないが、孤独の切なさと孤独の力の双方を感じ取れる映画だった。孤独を念頭に置くと、常に胸を張り、人前では笑みを絶やさないJBの姿がとても愛おしく思える。JBを身近に感じただけでも収穫のあった映画だ。

"Please Please Please"

https://www.youtube.com/watch?v=vruy2GRUsV8

"Soul Power" live in Kinshasa Zaire, 1974.9

https://www.youtube.com/watch?v=4N-NrucQcB8

Say It Loud I'm Black And I'm Proud

https://www.youtube.com/watch?v=lw4mf5vRSQM

Try Me (Live In Montreux 1981)

https://www.youtube.com/watch?v=BwfP2fSjA7U

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すべては我のそばに

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【映画】『JIMI:栄光への軌跡』(14)

http://jimi-movie.com/

  原題は「All is by my side」。ドキュメンタリーであれば邦題が正解だが、創作映画としてはオリジナルのタイトルが適切だ。

カーティス・ナイトのバンドで「ギターを弾かせてくれる場所があればそれでいい」という考えで演奏していたジミ。その才能を見出され、ロンドンに渡り人気を博し、モンタレー・ポップ・フェスティヴァルで凱旋帰国するまでのストーリー。

自分は変な声だからと歌おうとせず、他人とコミュニケーションを取るのが苦手な男。しかし、音楽に関しては幅広く吸収し、新しい音楽を生み出したいと常に思っていた。つまり、音楽に関するコミュニケーション形成には積極的だった。簡単に言えば「音楽バカ」だ。クラプトンに会えるならとロンドン行きを決意しながら、単なる憧れで終わらず、クリームのステージに上げてくれと熱望し、演奏でクラプトンの度肝を抜いてみせる大胆さも。ここが「音楽バカ」だ。クラプトンを出し抜こうというより、ただ、クリームと演奏したかったという気持ちが強かったと思いたい。

映画は複数の女性を軸に「愛」についても語られている。彼は愛を求めているのだが、上手く愛を伝える事が出来ず、恋人が盲目的な愛に陥ると暴発してしまう。原題が皮肉にも思えるが逆説的に愛の重要性を感じてしまう。

ジミを演じたアウトキャストのアンドレ・ウィリアムスは、顔の巨きさに違和感を感じるが、ジミの喋りの、最初に言葉が詰まり気味な部分とか、アクセントはよく似せている。それより、パフォーマンス・シーンでの成りきり方は凄かった。ジミの演奏を生で観たような気分になった。それだけに、演奏シーンはもっと味わいたかったのが正直な所。

ジミは孤高のミュージシャンと言えるだろう。もしくは革新的なミュージシャン。自分の考えが理解されにくいと感じた事も多かったのではないだろうか。商業主義に乗るのも苦痛だったかも。しかし、それ以前に、彼は本当に音楽が好きでギター道を極めたかったのが本音だろう。早逝したミュージシャンは、伝説に閉じ込められ、常に切なさが付きまとう。彼が生きていて、マイルスと共演したり、新機軸のブラック・ミュージックを開拓したり、老齢になり、一夜限りのエクスペリエンス復活劇があったり、と妄想は広がるがそれだけ切なさは増す。

結局、彼が自らの傍に引き寄せたのは、愛や名声より伝説だった。次代のミュージシャンや音楽を愛する人々の語り草になる事だった。それでも彼は、人々の前で、その時点で最高のパフォーマンスが出来て幸せだったのではないだろうか。

私のような凡人が想像したラストシーン。それは、モンタレーのステージで最初の一音を爆撃する場面だったが、それよりもこの映画のテーマや、ジミの人と成りを感じさせるラストだった。

※蛇足として、切ないジミが感じられる書籍を一つ添付しておきます。

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480431158/

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映画『それでも夜は明ける』

http://yo-akeru.gaga.ne.jp/

重い。ひたすら重い。
...
奴隷解放宣言の20年ほど前、ワシントン在住の“自由黒人”である主人公が、狡猾な奴隷商人の罠にかかり、奴隷として南部に売られてしまう。身分を保証されている黒人でも、“家畜”扱いされてしまう理不尽さと恐怖。当時の黒人がアメリカで生活するというのはどういう事なのかヒシヒシと伝わってくる。

ストーリー展開より、各登場人物のポジションから伝わってくる当時の白人・黒人の意識の描写が、この映画の重みだ。奴隷根性に染まる黒人、自分の身分を立て直そうとする黒人、奴隷商人、奴隷の売り買いの場に於ける各人、農園主(さまざまなタイプ)、その妻、奴隷の監督官・・・そして、ブラッド・ピット演じるカナダ出身の、アメリカ北部に住む流れ者。彼の姿勢は、南部に関わらない一般人の意識として興味深い。彼は、主人公から、奴隷状態の解放に必要な手立てを依頼される。彼は正直戸惑う。これが一般的な反応なのだろう。その揺らぐ心理状態から、一歩踏み出すかどうかだ。

しかも、踏み出せばハッピーエンドではない。その暗黒状態を真実として伝えたのが、この映画の最大の功績だ。邦題で勘違いしないように。これは希望を象徴する言葉だ。もちろん、意識や姿勢は夜明けを目指すべきだが、その前に暗黒を暗黒として捉えなければならない。

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映画『永遠の0』

今年初シネマ。

司法浪人中の青年が、自分の本当の祖父の存在を知り、フリーライターの姉と一緒に調べ始める。零戦乗りで特攻で散った祖父の評判は悪く、落ち込み気味だったが、次第に真実が暴かれてゆく・・・。キーワードは、戦争時代にはありえない概念(あるいは歪んだ解釈が成されていた概念)、「愛」だ。

ストーリー展開は面白い。謎が解けていくにつれ新しい謎が生まれていく構造(大体の答えは推測つくが)。伏線もきれいに張られている。ただ終盤は畳み掛けすぎな感じも。もっとも、私自身がアッサリ目の落ちを好む傾向にあるけど。

タイトルに込められた「0」は、零戦の0であることはもちろん、過去と現在をつなぐリンクの表徴としての0、また愛が人間の本質的な感情であるという意味での0・・・と妄想が広がる。

途中、合コンと知らずに友達に誘われた飲み会に出席した主人公。特攻の話になり、友人が「あれは自爆テロ」と一緒だと決め付ける。激昂する主人公だが、表面的には友達の言葉は当たっている。自分の人間らしい感情を押さえつけ、巨大な権力や思想に操られ、命を無駄にする行為だ。自分の命も、周囲の命も。対象が民間人か兵隊かは関係ない。人の命を奪っているのだ。

その友達のいけない所は、それを結論とした事だ。さらに考えを深めなければならない。上に立つものが悪だ。それも、特定の人物というより、人間の醜さの集積のようなモノだ。という事は、誰の心にも湧き起こる可能性のある醜さだ。ここを自覚せねば。上の問題ではないのだ。自分に関係ない事柄ではないのだ。余りにも虚しいが、人間はそれを乗り越えていかなければ。

虚無の0、プラスにもマイナスにも動く0、ゼロの意味は深い。

http://www.eienno-zero.jp/index.html

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大人の涙

●映画『風立ちぬ』

http://kazetachinu.jp/

大人を対象にしたアニメ映画と謳っている。戦争や悲劇的な死を主題にしているという側面はあるだろう。だが、根本的に、大人でなければ理解が難しい機微が表現されている点が大きいと思う。

主人公・二郎の「飛行機を設計したい」という純粋な気持ちは、夢の中で憧れの設計士と度々出逢う場面等に表れている。常に驚きと楽しさに溢れる世界。それは、二郎が持ち続けている心根だ。

一方では現実問題として、性能の良い爆撃機を造ろうと苦闘する。しかし、どんなにハードな状況になってもめげない。“夢”があるからだ。それにしても「一体日本はどこと戦争するんだい」と問うのはある意味切ない。

ストーリーのもう一つの軸は、愛する女性の死だ。いや、死ではなく、生きた時間の深みだ。結核で病弱な菜穂子との出逢い、仲睦まじく交流するシーン、夫婦となってからの、何気ない愛の交歓、いずれも印象的に描かれている。この辺りも、ある程度の人生経験を持つ方が身に沁みるはずだ。

背景のディテールも、一定以上の世代に訴えかける。木造住宅、土の道路、夜の暗さ、街灯の仄かな明るさ、柱の角のすり減り方、工場の窓の汚れやトタンの錆まで、詳細に描かれている。これらが自分の過去の風景とリンクするのは、やはり“大人”だろう。

ラストシーンを語るのは控えるが、静かに涙腺を刺激してくる。それは、悲しみの涙ではなく、清々しい涙だ。

「夢を持ち続けること」と「人を愛すること」。メッセージは確かに伝わってきた。

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ヌードの気持ち

●映画監督の蜷川実花と、女優の寺島しのぶ、鈴木杏の3名による対談番組を観た。映画でヌードになった事ばかり聞かれたり、濡れ場を「体当たりの演技」とだけ評価されるのはオカシイと寺島が切り出す。蜷川が「結局男性優位社会だから」と応じる。演技の一環であるのに「やるなあ、コイツ」みたいな感覚で、裸になった事だけが注目されるという意味合いだろう。確かにそればかりでは「総体的な演技力」については語られない恐れがある。

●しかしやはり、男にとって女優のヌードは刺激的だ。それが男性優位の意識から出ているのかは、男性自体は解らないのかも知れない。ただ、男性目線である事は確かだ。人間目線ではない。その男性目線の考え方が一般化されやすい世の中=男性優位社会という事だろう。

●大林宣彦監督の『転校生』をNHKBSで観た。今でも個性的俳優・女優として活躍中の、尾美としのりと小林聡美の演技が光る。男女高校生の身体と中身が入れ替わる話で、女子らしく振る舞う尾美、男子らしく振る舞う小林ともに、明るい笑いを誘う。海水浴のシーン。ビキニの水着を用意していた小林だが、下だけ穿いて「ジャーン!」と登場する。尾美はビックリだが、観ているコッチも驚いた。距離があるとはいえ胸が丸見えなのだ。だが、小林にとっては「演技の一環」として成り立っている。それで、観ている側は驚きながらも大笑いしてしまうのだ。寺島しのぶが「プライベートでも役から抜け切れない時がある」と言ってたが、小林も役に成り切っている為、自然に出来るのだろう。良い作品を創ろうという姿勢の前には、通り一遍の批評は決して届かない。常に「体当たりの演技」なのだ。

http://www.vap.co.jp/obayashi/tenkousei.html

♪Rolling Stones "Rocks Off"
http://www.youtube.com/watch?v=_lNP-x94-SE

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