レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.110 (1)
[119枚目] ● スペンサー・ウィギンス 『フィード・ザ・フレイム : ザ・フェイム・アンド・XLレコーディングス』<Pヴァイン>(10)
※本文を書くに当たり、鈴木啓志さんのライナーノーツを大いに参考にしています。
オリジナル盤は<ケント・ソウル>から同年に出ている。そこからさかのぼること4年前の2006年に、同じ<ケント・ソウル>から<ゴールドワックス>集がリリースされているが、今回の分は<フェイム>が抱えていた録音集となっている。顛末の詳細は鈴木さんのライナーに書いてあるが、拙投稿では最初にまとめて書かず、各曲の紹介のタイミングで触れていこうと思う。
スペンサー・ウィギンスは、42年メンフィスの生まれ。同じ地域にジェイムズ・カー(同い年)やボビー・ブランド(12歳上)が住んでいたと言う。また、J.ブラックフット(4歳下)やホーマー・バンクス(1歳上)とは小さい頃からの知り合いだそうだ。母親がバプティスト教会の聖歌隊で歌っており、ゴスペルは身近にあった。高校時代は兄パーシー、妹マキシンとゴスペル・グループを結成していて、卒業後はパーシーと共にデヴィッド・ポーターを含むフォー・スターズに加入していた。60年代初め、グループかソロか不明だが、メンフィスのクラブで歌っていた所をクイントン・クランチにスカウトされた。まず64年にデビュー・シングル「Lover's Crime」(アイザック・ヘイズ作)を録音、<ゴールドワックス>傍系の<バンドスタンド・USA>から65年にリリースされた。その後シングルを連発するもヒットに恵まれず、69年に<ゴールドワックス>が倒産すると、<フェイム>に所属した。70年に出した(15)「Double Lovin'」(ジョージ・ジャクソン+ミッキー・バッキンス作)はR&Bチャート44位に到達したが、ヒットは続かず。73年にウィギンスは結婚してマイアミに移り、ニューバース・バプティスト教会で執事兼聖歌隊指揮者となり、ゴスペル音楽の道へと進んだ。2002~2003年には、複数のアルバムを<タヴェット>からリリースしている。2017年には待望の来日を果たしたものの、23年にその生涯を閉じた。
ソウル歌手時代のウィギンスの作品を最初にまとめたのは、日本の<ヴィヴィッド・サウンド>による『ソウル・シティ・USA』だった(77年)。日本のソウル・ファンが誇るべき伝説的大功績である。その時も鈴木啓志さんが関わっておられ、今回のアルバムのライナーノーツでは、その分も含めて書かれているのでより展開が見えて興味深かった。
本盤は全部で22曲収録されている。今回は(6)までご紹介し、残りは8曲ずつ2回に分けてまとめる事とする。尚、(4)はYouTubeに無かったので音源は無し。
アルバムの冒頭から、自由自在な歌いっぷりにひれ伏してしまう。<フェイム>に移籍して最初の録音は69年10月(バックはフェイム・ギャング)に行われたが、当曲と(11)「Ooh Be Ooh Be Doo」の2曲は未発表だった。ディーン・ラドランドさんの英文ライナーにはジョージ・ジャクソンの作品ではないかと書かれている。
ハードなヴォーカルが炸裂する曲だ。<ヴィヴィッド>作品の表記では最後の「Baby」が取れている。本盤のライナーに記載されている曲目リストでは「We've Gotta Make Up」となっている。<フェイム>が権利を所有していた<ゴールドワックス>作品のひとつ(全6曲)。鈴木さんの考えでは6曲の内フェイム・ギャング絡みは3曲(後述)。残り3曲の内ひとつ(8)「Love Works That Way」はアメリカン・スタジオ録音(鈴木さんは68年と推測)のようだが、本曲ともう1曲(13)「Let's Talk It Over」は不明らしい。本曲の作者はクイントン・クランチ+デイヴ・ホールとなっているが、ハリウッド・フレイムス出身のドナルド・ハイトの67年作品らしい(コンポーズもドナルド本人)。不明曲分の録音は、鈴木さんによれば、バックバンドがアメリカンともフェイムとも違うようなので、リック・ホールがメンフィスにスタジオを持っていた69~71年頃ではないかという。ややこしい話だ。
フェイム・ギャング以後の未発表曲で、他には(4)(10)「Make Me Yours」(18)「Hit And Ran」がある。明るい曲調だが微妙に愁いもはらんでいる。ジョージ・ジャクソン+ユージン・ウィリアムズの作品。ユージンは、オーティス・クレイの「Trying To Live My Life Without You」の作者でもある。奇しくも(4)と一緒にクレイのデビュー盤に入っている(と言うかタイトルでもある)。
4. Holding On To A Dying Love
女性コーラスが寄り添いソフトな感覚もあるが、決め所のシャウトには身が引き締まる。ジョージ・ジャクソン+ジェイムズ・ドットソン+ロナルド・タウンゼントが書いた70年の作品。オーティス・クレイが歌っているが録音はこちらが早いそうだ。ライナーの曲目リストでは「Holding On」。
<フェイム>から<サウンズ・オブ・メンフィス><XL>に拠点を替えて<XL>から2枚のシングルを出す予定だったがお蔵入りとなっているようだ。XL1345(ライナーでは1346と記述)が この曲と(14)「I Can't Get Enough Of You Baby」。XL1347が、(9)「Feed The Flame」で、片面は他者となっている。本曲は、ストリングスを使った広がりのあるサウンドに迫力のヴォーカルが充満する。73年の録音。
穏やかなサザン・ソウル。ダン・グリーア作で73年(12)「Take Time To Love Your Woman」と一緒にシングル化されている。<サウンズ・オブ・メンフィス>盤。





















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