[105枚目]●James Brown 『In The Jungle Groove』<Polydor>(86)
レジェンド中のレジェンド、ジェームス・ブラウンの作品には、優れたコンピレーション盤も多数残されている。中でも、本盤のコンパイルとリイシュー・プロデュースを手掛けているクリフ・ホワイトとティム・ロジャースの仕事は、高評価を得ている。85年に『CD Of JB』、86年が本盤、87年が『CD Of JB Ⅱ』、88年『Motherlode』と全て手に入れたいアルバムである。さらに、クリフは、93年『Star Time』という4枚組CDボックスセットも手掛けている。
私が持っているのは、アメリカと同時にリリースされている西ドイツ盤。尚、2003年には1曲加えた再リイシュー盤が発売され、日本盤も出ている。ちなみに追加された曲は、73年にJBが担当した映画『Black Caesar』のサウンドトラック内に収められている「Blind Man Can See It」のエクステンディッド・ヴァージョンである。
その他の概略を少し書いておく。JBの作品は、ヒップホップ系のミュージシャンに多数サンプリングされているが、中でも人気が高いシングル盤だった(2)「Funky Drummer」が、初めてアルバム内に収録されたのが本盤であるのも話題となっている。また、『The Village Voice』の批評家投票で「86年のベスト・リイシュー盤」の第4位に選出されている。
参加ミュージシャンを列挙しておく。
ベースが“スイート”・チャールズ・シュレル(1,2)、ブーツィー・コリンズ(3,4,6,7,8)、フレッド・トーマス(9)。
ドラムスがクライド・スタブルフィールド(2,3,4,6,7)、ジョン・ジャボ・スタークス(8,9)、メルヴィン・パーカー(1)。
コンガはアート・ロペス(1)、ジョニー・グリッグス(3,4,6,7,8)。
ギターは、アルフォンゾ・ケラム(1,2)、ボビー・ローチ(8)、キャットフィッシュ・コリンズ(3,4,6,7,8)、ヒアロン・チーズ・マーティン(6,7,9)、ジミー・ノーラン(1,2)、ロバート・コールマン(9)。
オルガンはボビー・バード(3,4,6)。
サックス陣は、エルディー・ウィリアムス(1,2)、ジミー・パーカー(9)、ルイス・ティルフォード(2)、メイシオ・パーカー(1,2)、ロバート・チョッパー・マックロウ(3,4,6,7)、セントクレア・ピックニー(1,6,7,8,9)。
トロンボーンがフレッド・ウェズリー(2,8,9)、トランペットがクレイトン・グンネルズ(3,4,6,8)、ダリル・ハッサン・ジェイミソン(3,4,6,7,8)、ジェロン・ジャサン・サンフォード(7,9)、ジョセフ・デイヴィス(2)、リチャード・グリフィン(2)、ラッセル・クライムス(9)、そして、ボビー・バードのサイド・ヴォーカルが(6,7,8)となっている。
「全ての楽器はドラムである」と言い放ったJB。付け加えるなら彼のヴォーカル、というかシャウトさえもリズムで構成された曲の一部を成していると言えるだろう。
(1)It's A New Day
70年のシングル(King 45-6292)が元盤。ちなみに裏面は「Georgia On My Mind」。R&Bチャート3位、ポップチャート32位。ビッグ・ダディ・ケイン「Set It Off (Extended Mix)」などでサンプリングされている。収録アルバムは『It's A New Day So Let A Man Come In』。耳から離れないギターとホーンのリフが基調となっている。ベースもかなりうごめいている。
(2)Funky Drummer
こちらも70年のシングル盤がオリジナル(King 45-6292)。Part1とPart2で両面となっている。R&Bチャート20位、ポップチャート51位。サンプリング作品は多岐にわたっている。パブリック・エネミー、N.W.A.、LLクールJ、ランDMC、ビースティー・ボーイズらのヒップホップ勢ばかりでなく、エド・シーランやジョージ・マイケルも取り上げている。また、シングル・ヴァージョンにはJBのヴォーカル・パーカッションが含まれているとの事だ。クライド・スタブルフィールドのドラミングが中核だろうが、サックス・ソロやギター・リフ、オルガンなど次々と聴かせるサウンドが続く。
(3)Give It Up Or Turnit A Loose (Remix)
オリジナル・シングルは69年発(King 45-6213)。R&Bチャート1位を獲得、ポップ・チャートでも20位を記録している。70年のアルバム『Ain't It Funky』にインストゥルメンタル版(ギターが活躍)が収録されている。JBのマネージャーも務めていたソングライター、チャールズ・ボビットの作品。最初はピーウィー・エリスがアレンジしていたが、70年のライブ・アルバム『Sex Machine』でJBが歌い直したとの事。74年にはリン・コリンズがシングル盤で出している。尚、ヒップホップ黎明期のDJ、クール・ハークがいち早く取り上げた曲でもある。ベースに続く叩きつけるようなドラムで目が覚める。オリジナルはカオス的なフィーリングもあるが、ヴァージョンを重ねるごとに、硬質でクールな感覚が目立っているようだ。
(4)I Got To Move
この時点で未発表曲。70年に録音された物。ホーンリフ、ベース、乾いたドラムが特に印象的。抑制の効いた曲である。
(5)Funky Drummer (Bonus Beat Reprise)
(2)から、主にJBの掛け声とドラムだけを取り出して編集したもの。
(6)Talkin' Loud And Sayin' Nothing (Remix)
オリジナルは70年(King 45-P-6359)。ジェームス・ブラウン+ボビー・バードの作品。政治批判も込められた曲だ。72年に再発され、同年のアルバム『There It Is』にも収録されている。本リミックス版では、最初に掛け声が入っている。ベースのサウンドが黒っぽさを演出している。
(7)Get Up, Get Into It, Get Involved (Mono)
「立ち上がって参加せよ!」という、これも社会的メッセージがフィーチャーされた曲。70年発シングル(King 45-6347)。R&Bチャート4位、ポップ・チャート34位。ビッグ・ダディ・ケイン、フル・フォース、パブリック・エネミーなどがサンプリング。「Sex Machine」などを作曲したJB+ボビー・バード+ロン・レンホフの作品。ライブ・アルバム『Revolution Of The Mind』と『Love Power Peace』でも聴ける。JBとボビーの掛け合いが熱い。徹底したリフを奏でるギターが3分半過ぎにソロを少し。
(8)Soul Power (Re-Edit / Mono)
71年、3部構成のシングルとしてリリース。R&Bチャート3位、ポップ・チャート29位。(7)で上げた2枚のライブ盤に当曲も収録されている。確かに似た感触を持つ曲である。ホーンのキレ、ドラムが入るタイミングなど相変わらず凄い。JBとボビーの掛け合いも。
(9)Hot Pants (She Got To Use What She Got To Get What She Wants)
JB+フレッド・ウェズリー作。<キング>傘下ではあるが、自ら設立したレーベル<ピープル>から71年にリリースされたシングル。R&Bチャート1位、ポップ・チャート15位、『キャッシュボックス』のチャートでも10位を記録した。ただし、この後<ポリドール>に移籍する。移籍第一弾のアルバムが『Hot Pants』で、本曲を収録し直している。パブリック・エネミー、ザ・ストーン・ローゼス、カイリー・ミノーグらがサンプリングしている。ボビー・バードにもホット・パンツをテーマにした曲がある。本曲は何となく落ち着いた感じに思える。クールというのとも少し違う感じがする。
2024年の時点で考えると、本盤がリリースされた86年でも38年前。オリジナルと照合すると半世紀前の作品である。しかし、各曲のヴィヴィッドさは素晴らしい。もちろん、過去の音楽作品に名曲は無数にある。しかし、JB作品ほど活力にあふれたものには中々出くわさない。まだ未聴の方がいらっしゃったら、大いに楽しんで頂きたい。
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