【試聴記】キーシャ・コール『ア・ディファレント・ミー』
キーシャ・コールは俗に、メアリー・J・ブライジの後継者的捉え方をされています。どうも、その発想自体が私は気に喰わなくて、デビュー・アルバムもまともには聴きませんでした。というか試聴してもピンとこなかった経緯もあります。
今回新作を試聴して、メアリー云々を気にしなければそこそこの完成度だなあと思いました。確かにメアリー流の感覚が聴き取れる部分もありますが、基本的には比較の耳に拘らない方が彼女の世界に浸れるようです。
序盤はドラムとベースが強くフィーチャーされている感じ。このドラムの疾走感、私は好きです。ただ、音がデカ過ぎてヴォーカルの邪魔になっているキライも有り。但しヘッドフォンだからかも知れないです。カーステレオで聴いたりすると、心地好いドライブ感が得られそうです。
中盤はゲスト陣とのコラボ。アミナ・ハリス、ナズ、2パック(!)、モニカといった面々。ここは、まあ普通な感じ。2パックは相変わらず存在感有るなあ等と、関係ない事に思いが至るようなレヴェルの出来です。不快じゃないけど超快適とは言えません。
終盤の曲群が、私は一番落ち着いて聴けました。彼女の事を“プリンセス・オブ・ヒップホップ・ソウル”(因みにメアリーはクイーン。この辺の安易な転用も気に喰わない)と称しているようですが、“ヒップホップ・ソウル”には2つのタイプが有るんじゃないかと思っています。どちらを主にするかという問題。ヒップホップの乗りを保ちながらのソウルフルな歌唱か、歌主体の脇で微かにヒップホップの香りがするか・・・私は後者の方がより好きです。私流に表現すれば「ソウル(R&B)withヒップホップ」という感じです。このアルバムでいえば正にそれが後半に集中しています。11曲目や14曲目は特に気に入りました。ただここでもメアリーと比較してしまうと、エキセントリックな部分が足りないとか、キーシャの魅力とは本来関係ない部分に耳がいってしまいます。キーシャはメアリーよりシンプルな代わりにハスキーな声を持っていて十分聴き応えは有ります。14曲目あたりもメアリーが使いそうな「エ・エ、オ・オ」といったフレーズが出てきますが、乗りの質自体が違う感じです。メアリーはヴォーカルが完全に“リズム化”しているような独特の乗りを持ち、それが彼女の歌唱力不足を補ってきました。キーシャはそこまで純化はしてないですね。ただ乗りが好いという程度です。
野球の投手にたとえると、メアリーは最早ヒップホップ・ソウルを「決め球」としては発揮していません。カウントを稼ぐ程度の使い方です。キーシャも出来れば一回り広い範囲に広がった方が彼女の魅力が出せるかも知れません。そのヒントはこのアルバムに有ると思います。序盤・中盤・終盤の特長を再度シャッフルすれば面白い事になるような気がするのです。
買わなきゃ損をするアルバムではないけど、買っても損はないアルバムです。
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