役者としての歌手、物語としての昭和歌謡
何年か前、ちあきなおみのドキュメンタリーを放送してました。
「朝日楼」も聴けたし、デビュー以来の、歌で綴る経歴も楽しめました。演劇と歌を組み合わせたような、新しい試みに取り組んだ事も知り、つくづく「歌に対する姿勢」が情熱的で斬新な人だなあと認識を新たにしました。
細川たかしで有名な「矢切の渡し」も、彼女が或る曲のB面で歌っていたもの。大衆演劇で有名な梅沢富美夫が、演目のバックで流したそうです。
彼曰く「ちあきなおみの歌はいやらしいんだ。こういう歌はいやらしくなくちゃ駄目なんだ」
面白い表現ですが、言わんとする事は十分分かります。
ただならぬ関係の男女の物語である以上、身も心も捧げ合うニュアンスが出せるかどうかという事でしょう。歌手や役者は「異世界」を如何にリアルに感動的に表現するかが、真価を問われる所です。
ちあきなおみは、許されざる関係の男女の悲恋を、濃厚に切なく歌い上げ、聴く者を酔わせるのです。
ある意味「役者的歌手」かも知れません。その卓抜な表現力が、多くの人の記憶に残っている所以だと思います。
そういえば、「昭和歌謡」自体が物語性の高いものが多かったような気がします(懐かしさが先に立っている所為もあるでしょう)。
日本語中心の印象的な歌詞と、他人と同じ様な歌い方をしない、個性派揃いの歌手たち・・・これらが「昭和歌謡」の「物語性=異世界」を支えた要素だと思います。
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/yagirinowatashi.html
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