レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.109 (1)
[118枚目] ● R・ケリー『愛の12プレイ』<BMGビクター>(94)
※本文を書くに当たり、鈴木しょう治さんのライナーノーツを大いに参考にしています。
オリジナルは93年<ジャイヴ>発『12 Play』。前作は、R.ケリー&パブリック・アナウンスメント名義なので、ソロ名義での最初のアルバムとなる。ここから怒涛の活躍が始まり、ブラック・ミュージックシーンのトレンドを作り上げるような存在となるのだが、児童性的虐待などの罪で2021年と22年に有罪評決を受け懲役31年の判決が下され、現在収監されている。告発自体は96年から成されており“事件”自体は91年という事なので、既にデビュー当時から怪しい人物だった可能性がある(一度無罪評決が出ている)。ミュージシャンは作品で判断すべきであり、私もR.ケリーのサウンドやヴォーカルは好きなだけに、彼の罪を考えると鬱々とした気分になる。
事件のこともあるが、当日本盤の帯に書いてある宣伝文句も気持ち悪い。また、その他にも、日本版の曲目リストでは(4)のスペルが「Your're」になっている(本レビューでは訂正済み)。さらに、各曲名に邦題がついていて、当方も()内に邦題を付記しているが、(9)が「ストリートに返れ」と表記されていた。おそらく「帰れ」の間違いと思われるのでここでは「帰れ」とした。リスト以外にも指摘したい部分があるのだが、根掘り葉掘りする必要も無いだろうからこの辺で控えておく。
R.ケリーのバイオを追ってみよう。67年シカゴ生まれ。本名ロバート・シルヴェスター・ケリー。母は教師でバプティスト派の教徒だが、父親の身元は不明で、R.ケリー自身実父を知らない。2人の姉と、弟と妹が居て、半分は血のつながりがあった。住んでいた地域は犯罪の巣窟のような場所で環境が悪かった。彼が5歳の頃新しい父親を迎えている。また、8歳の頃、ガールフレンドが年上の子供たちに突き落とされ川で溺死するという悲劇も味わっている。また、実弟の証言によればケリーとその弟は8歳年上の姉から性的虐待を受けていたと言う(姉は否定)。他にもトラウマになるような経験がウィキペディアに記されている。いずれにしろ、最終的には大罪を犯す事になるが、音楽の道が彼を一時救った事は間違いない。
音楽方面について書くと、8歳の頃から教会で歌い始め、13歳になるとハイドパーク・ケンウッド地区(閑静な住宅街)にあるケンウッド・アカデミーに入学。音楽教師に勧められて高校のタレントショーでスティーヴィー・ワンダーの「Ribbon In The Sky」を歌い1位となった。それまで音楽教師が音楽の道に進むよう進言していたものの、バスケットボールに打ち込んでいたケリーは断り続けていた。しかし、このステージを機にケリーは音楽を選んだ。高校中退後、ストリート・パフォーマンスを手始めに、結成したグループで素人参加番組のグランドチャンピオンになり、マイナーレーベルと契約。しかし、トラブルが発生し脱退。捨てる神あれば何とやらで、ヴィッキー・ワイナンズ主演のミュージカルのオーディションを受けていたケリーの素質をバリー・ハンカーソンが見抜き、マネージャーになると共に<ジャイヴ>レコードとの契約に手を貸した。バリーは、パブリック・アナウンスメントとしてのデビューから『12 Play』も加えた98年の『R.』までエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。
本盤のプロデューサーは(1)(3)(7)(12)がティミー・アレン。他はR.ケリー自身が担当している(各種インストゥルメンツも彼が担当)。ティミーはチェンジやアトランティック・スターのメンバーだったが、<ジャイヴ>でプロデュース業に従事するようになり、R.ケリーの他、ハイ・ファイヴやジョーなどのプロデュースを務めた。本盤は、R&Bアルバム・チャートで9週連続1位、ビルボード200チャートで2位。2000年発の『TP-2.com』と2005年発の『TP.3 Reloaded』と合わせて3部作と言われている。
※文章が長くなったので、今回は5曲のご紹介とします。
1. Your Body's Callin'(やみつきボディ)
低音部が、存在感を保ちながらも全体を柔らかめに支えたサウンドを、ケリーが甘くしなやかに撫でる。R.ケリーのヴォーカルは、淫靡な感触よりも誠実な温もりを感じる。多くの人が自然と受け入れる歌声だ。ギターがジャズ系のボビー・ブルーム、キーボードはR.ケリー作品に多数参加しているジム・スラッタリー。(3)(7)もジム。3枚目のシングル(LPヴァージョンの他3曲のリミックス版)でホットR&B/ヒップホップソングチャートで2位、ホット100で13位に到達した。アリーヤをフィーチャーしたヴァージョンが「His & Hers Radio Edit」と「Prelude/His & Hers Mix」の2種類入っている。
2. Bump N' Grind(バンプ・アンド・グラインド)
2枚目のシングル(4ヴァージョン)。ホット100で1位、ホットR&Bソングチャートでは12週間1位(94年のアメリカでもっとも長く続いた曲)。官能的な内容とはいえ勇気づけられるようなパワーを感じる。その傑出した力強さを思う時、真摯に音楽の道を突き進んでくれたらと残念で仕方ない。
3. Homie Lover Friend(ラヴァー・フレンド)
R.ケリー自身のラップをフィーチャー。引きずるようなリズムに乗って、ゆったりめに展開しスムーズに歌声に繋げている。
4. It Seems Like You're Ready(君は準備OK)
ホットR&B/ヒップホップソングチャートで29位、リズミックトップ40チャートでも29位、ビルボード・エアプレイチャートで59位。ドゥルー・ヒルなどがサンプリング。あくまでテンダーなR&Bバラード。聴いていて気持ちが落ち着いてくる。終盤は力が入るが、盛り上りはナチュラルだ。
5. Freak Dat Body(フリーク・ダット・ボディ)
ヒップホップ側にグッと近づいた曲。これもR.ケリー自身のラップで、(3)よりも本格的に攻めている感じだ。













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