少し前にリリースされた『センテニアル・コレクション』がテキスト。未発表テイクが有るのも話題だろうが、全体の音創りもリニューアルされ、伝説のブルースマンが再び甦った体のようだ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/4033293かつて話題を呼んだ<CBSソニー>の『コンプリート』でも、耳元に酒臭い息を吹きかけられたような生々しさを感じたものだ。今回はそれをも上回る様子。私は未聴なので、購入予定に入れて置かなければならない。
特集記事も購買意欲に火を点けた感じだ。各曲の解説やカバー・ヴァージョンの紹介もさることながら、2つの「音楽論」が興味深かった。ロバート・ジョンソンをある程度聴いている人なら、なんとなく把握は出来ていたが、改めてきちんと纏められると頭の整理に役立つし、コラムとしても面白かった。
琵琶演奏家でもある後藤幸浩さんは、弦楽器奏者としてのロバジョンのテクニック(ヴォーカル面も含む)をつぶさに解説されると共に、サン・ハウスの豪放さやロニー・ジョンソンの繊細さを受け継ぎ、次代のシティ・ブルースに繋がるモダンさを強調。彼自身が過去と未来のクロスロードだったと喝破されている。
後藤さんが「時間」を軸に取り上げたとしたら、もう一人の鈴木カツさんは「空間」に重きを置いている感じ。黒人文化と白人文化の共有財産“コモン・ストック”の視点から、カントリー・ソングや白人文化との絡みを丹念に追う。漠然と聴いていては思い至らないポイントだ。
2つの音楽論に、佐野ひろしさんのバイオグラフィーを基にした序文を加えると、伝説の靄は振り払われ、「人間ロバート・ジョンソン」が見えてくる。
蛇足を承知で、私のロバジョン観。他の戦前ブルースマンに比べ、彼は聴きやすいブルースマンだと思う。卓越したテクニックが魅力的な面もあるだろうが、それも含めて、とても“演劇的”なミュージシャンだと思う。わざとらしいという意味ではなく、表現力が豊かで個性的なのだ。ビビットな面もある。サン・ハウスの押しの強さは逞しさを感じるが、ロバジョンはエキセントリックだ。血のニオイを感じる瞬間もある。一方、切ない弱々しさを披露する面もある。全体的に、どうもチンピラっぽさが抜け切れない。それでいながら見事なギターを聴かせる所が、カッコイイのだ。正にカリスマ(あまり使いたくない言葉だけど)。
『センテニアル・コレクション』は、伝説を現実化した一つの試みかも知れない。しかし、問題点が無い訳ではない。最近色んな所で話を聞くが、36年~37年に録音されたオリジナルは、スピードを速めて録音されているらしい。もし、“正常”に修正されるなら、また違ったロバート・ジョンソンが、我々の下に立ち現れるという事になる。
やれやれ、彼の伝説は未来永劫に続くのだろうか・・・まさか、それも含めて悪魔と取り引きしたのでは!
♪"Preachin' Blues (Up Jumped The Devil) [Centennial Edition] "
http://www.youtube.com/watch?v=LRACqORUuvc♪"Cross Road Blues [Centennial Edition]"
http://www.youtube.com/watch?v=P-zmIZ2V9R4
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