心に深く刻まれるもの(1)
●V.A.『ソウル・ディープ・デラックス・エディション』<アトランティック>(13)
http://shop.wm
桜井ユタカさんが編集された『ソウル・ディープ』がリリース(シリーズの最初の一枚)されたのは72年。私が黒人音楽を聴き始めたのは80年前後だったので、10年近くの開きがある。それでも、『ソウル・ディープ』は教科書的な一枚だった。但し、同時期、<Pヴァイン>の<チェス>、<ヴィヴィッド>の<スペシャルティ>、ルイ・ジョーダンを表紙とした『レコード・コレクターズ』の創刊、英<エイス>等の影響で、70年代ソウルに向かうよりも、時代を下っていく形となった。
それはともかく、今回の『ソウル・ディープ』の購入は、やはり懐かしさから食指を伸ばしたものだ。鈴木啓志さんの編集で、以前と同内容ではないにしろ、胸はときめいた。ジャケット・デザインは以前と同じだが、中身は更に充実している。曲の多さの面でも、編集方針の面でも・・・2枚組で、Disc1がマッスルショールズ編、Disc2がその他の地域編となっている。「ディープ・ソウル」という括りが「サザン・ソウル」を基盤にしているものの、イコールではない事を実証する構成だ。
【Disc1】スタートはドン・コヴェイ。因みにDisc2はベン・E・キングからだ。両者共、リズム&ブルース~アーリー・ソウルのイメージが私は強い。しかし、考えてみれば、アーリーだからディープではないという理屈は成り立たない。いや、理屈で考えるのがそもそもおかしい。聴いてみて、胸の奥深くに感応するならそれは「ディープ」である。自分の耳からスタートするのがやはり自然だ。もちろん、他人の評価や音楽を生んだ背景等の知識は参考になる。しかし、それも、自分の耳で確かめた方が良いに決まっている。音楽は聴かなきゃ分からないのだ。
♪Don Covay "I Stole Some Love"
http://www.youtube.com/watch?v=romZZLHrc1g
さて、アルバムは、続いてオーティス・クレイの登場。
オーティス・クレイは一から十まで好きではない。だが、本盤のクレイは凄い。2枚合わせて4曲取り上げられている。鈴木さんが、どうしても減らせなかったという気持ちが解る。「ディープ・ソウル斯くあるべし」。クレイの歌唱は象徴的である。また、有名曲を複数取り上げているので、曲を起点に他の歌手のヴァージョンへと聴き進めていく事も出来る。正にテキスト的でもある。
♪Otis Clay "You Don't Miss Your Water"
http://www.youtube.com/watch?v=bV6CLpARHVQ
クラレンス・カーターも4曲。キャンディ・ステイトンを従えた「イフ・ユー・キャント・ビート・エム」では、キャンディがコール&レスポンスもそこそこに、バック・コーラスに徹しているのが微笑ましい。ソウル史上、最も贅沢なキャンディ・ステイトンの使い方だ。「ザ。フュー・トラブルド・アイヴ・ハッド」は「パッチェズ」の原型らしいとの事。話題を呼びそうなのがもう一曲。デュエイン・オールマンの鳥肌ギターで有名な「ザ・ロード・オブ・ラブ」。バックが全く違う一年前の録音。スプーナー・オールダムのオルガンをはじめやたらとクールだ。クールレンス・カーター、もしくは黒レンス・カーター・・・二段落ちが着いた所で一旦中断。直ぐには続きを書けそうにないが、いずれ。(つづく)
♪Clarence Carter "The Few Troubles I've Had"
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