Story

アンドロイド

「さて、ワトソン君!ウチのかみさんがよく言うんだが、私は頭脳は大人だが身体は子供だそうだ。しかし、灰色の脳細胞とじっちゃんの名に懸けて私は謎を解いた。○○さん、犯人はあなただ!以上、古畑任三郎でした」

「博士!この名探偵アンドロイド、盛り込み好きじゃないっスか?」

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【創作】恋人たちの年の暮れ

※本編は、投稿サイト『週刊ドリームライブラリ』さんの三題話企画に応募したものです。お題は「神」「とり」「大統領」。更に「甘い話」という縛りもありました。

どうぞ、ご笑読ください。

http://www.w-dreamlibrary.com/corner71/pg888.html

Takarakuji


   

「神様仏様、今年こそ当たりますように!」
 
テーブルの向かい側で拝む恵の姿は、もう何年も見ているが、今年は特に気合いが入っている。幸男の目にはそう映った。付き合い始めて6年、同棲生活は3年。結婚に踏み切れないのは、二人とも定着した仕事に就いておらず、先行きが不安だからだ。そういう時期こそ堅実さが必要なのだが、ついつい宝くじなんぞ買ってしまう。困った事にここは意見が一致する。
 
年末ジャンボ、今年最後の大勝負。大晦日まで仕事をした二人は、帰宅後二人で確認しようと決めていた。食事も風呂も済ませ、気持ちを落ち着かせて、厳粛な儀式に臨む。50枚の宝くじを番号が見えるようにテーブルに並べ、テレビで紅白歌合戦を放送している中、スマホから当選番号掲示のサイトにアクセスした。二人で念入りに確認。その20分あまりの時間が、幸福の時だったかも知れない。すぐに厳しい現実が訪れ、ため息混じりの二人を後ろ倒しにした。
 
「ダメだ~」「ダメね~」落胆のハーモニーが虚脱感を生み、紅白に戻したテレビ画面も全く頭に入らなかった。
 
「そうだ、トランプでもしよう!」
 
幸男が、背後にある小さな本棚の横からビニール袋を取り出した。書類のような紙切れのようなものが床に数枚落ちたが、幸男はよく見もせず本棚の横に戻した。
 
「ジャジャーン!」
 
恵は気乗りしないものの起き上がり、トランプを見た。あぁ、幸男が買いそうなヤツ。心の声に止めたが、よくトンチンカンな衝動買いをする幸男だった。トランプの表は、アメリカの次期大統領トランプ氏だ。右手を上げ、口を歪ませながら熱弁するお馴染みの姿。
「これ、トランプ大統領トランプって言うんだよ。ははは」
「まさか買ったんじゃないでしょうね」
「買わなきゃどうすんのよ!」
 
ダメだ、こりゃ。心の声に止めたが、コタツのテーブルにうっ伏し態度には出した。伝わらないだろうけど。
 
「ババ抜きやろう!」
「二人じゃダメでしょ」
「七並べ!」
「シチなんて、質屋連想するから止めて」
「神経衰弱!」
「今一番聞きたくない言葉」
 
やっと幸男にも恵の気持ちが伝わったようだ。しばしの沈黙の中、テレビ画面に目をやると、紅白もフィナーレを迎えていた。
 
「今年のトリは誰だったんだろう?てゆーか音が出てないじゃん」
「あ、ごめんごめん、リモコン踏んでた。なんか5人組の男が歌ってたなぁ」
「嵐?はちょっと前歌ってたよねぇ・・・ギャッ!キムタクがいるじゃん。中居くんも。SMAPが出たの!?オーマイガッ!!」
 
コタツのテーブルは思ったより痛かった。おでこをしたたかに打ちつけた恵は、おかげで現実に戻った。
 
「初詣に行こうかぁ」
「そうだね、行くか」
 
二人が身支度をしている時、幸男が座っていた場所に一枚の宝くじが落ちているのに恵が気付いた。むむむ、外れくじはきちんと片付けたはず。コートに片手を通したまま宝くじを拾い上げた。半信半疑でサイトを再チェック。
 
やがて、恵の動きが止まった。鈍感な幸男もさすがに異変に気付く。放心した表情の恵は、宝くじをヒラヒラさせながら、喉に張り付いた声で、
 
「いーーっせーんまーーん」
 
「えっ!?当たってんの!!」「イエス、ウィ・キャン!」
「それ、オバうぐっ」幸男の唇を唇で塞ぐ恵。幸男も連続攻撃で返す。そのまま二人は狭い部屋を右に左に転がり始めた。
 
チュチュチュ、ゴロンゴロンゴロン。チュチュチュ、ゴロンゴロンゴロン。
 
恵は幸男の肩越しに、クシャクシャになりかけた宝くじの皺を延ばし眺めていたが、やがて重要な事に気が付いた。
 
わっ!これ、去年のだ!
 
チュ、ゴロン。チュ、ゴロン。
 
まぁ、いいか。もうちょっと夢見とこっ。
 
チュチュチュ、ゴロンゴロンゴロンゴロン。チュチュチュ、ゴロンゴロンゴロン・・・。
 
(おわり)

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【創作】だれが一番?

Daregaichiban


※お世話になっております文章投稿サイト『週刊ドリームライブラリ』さんの三題話に募集しました。

お題は「なす」「ゆかた」「選挙」の三つ。更に今回は「怖い話」という縛りもありました。

毎回考えるのですが、中々完成に至らず。今回は編集長さんのアドバイスも頂きどうにか書き上げました。...

宜しければ読んでみて下さい。

http://www.w-dreamlibrary.com/corner64/pg888.html

国民的アイドルグループABC48の人気度を競う総選挙の時期がやってきた。今回の選挙で一位を取った娘は、新曲「浴衣でアモーレ!」のセンターを務めるという、毎年恒例の趣向である。
 
だが、今年は妙な「都市伝説」が流れていた。ライブやテレビ番組を観たファンから、メンバーが一人多いんじゃないかとの声が上がっているのだ。ネット上で広まった画像には、確かに49人映っている。しかし、問題のメンバーの顔まで確定出来ないのだ。正規のメンバーも、心当たりはないと言う。
 
結局、若干失速気味の人気を回復させる為の話題作りだろうと落ち着いた。総合プロデューサーの安元昭男が企てそうな事でもある。
ついに、総選挙当日。某テレビ局は人気司会者を登用し、完全独占生中継という気合いの入れようだ。新曲に合わせ、メンバーは色とりどりの浴衣姿で客席最前列に勢揃いし、自分の名前が呼ばれるのを待っていた。安元も同じ列に並んでいた。元々表情が豊かな人間ではないが、緊張しているのか、やけに無表情に見えた。
 
ステージ中央には演壇がセッティングされ、鮮やかな花々が背景に設えてあった。その背後に大型スクリーンがあり、喜びの表情を大写しにする。ニコニコ動画風のファンのコメントも画面に流れていく手筈だ。
 
司会者席は斜め後ろに下がった所。盛り上げるポイントになると、中央まで出てくる予定だ。客席の安元からはほぼ対角線の位置になる。発表は、21位から48位までを紹介する形でスタートした。ご丁寧に一人一人名前の書かれた封筒をアシスタントの女性が持って来て司会者がおもむろに開けて読み上げるパターンだ。司会者もアシスタントも浴衣姿という徹底ぶりだ。会場が徐々に盛り上がってきた中、48位まで終わり、いよいよベスト20となった時、アシスタントがもう一通持って来た。「早いよ~」と司会者がミスを笑いに変えようとした所、封筒の表が見えた。
 
49位。アシスタントの女性はにこやかな表情のまま。
 
司会者は安元を見た。相変わらず無表情で、少しも動かない。
 
おいおい、無視するのかよ。俺に断りもなく何か企んでやがるな、よし、乗ってやろうじゃないか。
 
司会者は、高々と封筒を掲げ、「おーっと皆さん驚きです!49位の封筒があります!どういう事でしょうかね~。新人さんのお披露目かな?」
 
司会者はニコニコしながら中を見たが、強ばり気味の顔付きでメンバーが並ぶ客席前列を右から左へと眺めた。
 
「えぇと、宮沢めろんちゃん・・・」
 
在籍しているメンバーだった。めろんちゃんは毎年最下位を争っている。ところが今年は最後まで名前を呼ばれず、嬉々として待っていたのに、まさかの49位。彼女は一度立ち上がったものの直ぐに失神した。
 
めろんちゃんが担架で搬送された後、会場の雰囲気は一挙に曇った。司会者は人騒がせな演出にムカムカしながらも、進行に集中した。だが、メンバー達は呆然としたままだ。残り20位を19人で争う・・・あるメンバーは人数を何度も数えていたが、やがて頭を抱えた。それでもプロ意識のある娘たちで、呼ばれる度に壇上に上がりコメントは試みた。しかし、途中でこけたり、笑顔がひきつったり意味不明の言動も出てきて散々である。大画面のコメントも不安を煽るようなものが徐々に増えていった。そしてある時から全くコメントは流れなくなった。
 
常に一位争いをしている篠原りのと田辺るるは、二人抱き合って青ざめている。
3位、田辺るる。
 
るるは一人で動けず、りのが付き添うような形で二人してステージに上がった。「次、私でしょ私でしょ」りのは一刻も早く終わらせたかった。「ちょうだいちょうだいちょうだい」るるを抱き締めながら、司会者に手を伸ばした。彼もさすがに怒りを抑える事が出来なくなった。2位の封筒の中を見て、名前も呼ばずりのに渡した。「落とし前つけてやる。休んでなさい」
 
彼は安元の前へ行き、「一体どういう事だ!説明してくれ!」と意気込んだ。だが、安元は反応なし。まるで、そう、まるで、魂が抜けているようにさえ見えた。
 
仁王立ちの司会者の元に、アシスタントが何事もなかったかのように封筒を持って来た。当然の如く「1位」と書かれている。憮然としてアシスタントを睨むが、この娘には関係ない事だと冷静さを取り戻し、司会者は舞台中央のテーブルで名前を読み上げた。
 
「那須・・・那須清美さん」司会者はその名を知らなかったが、メンバーは全員表情が固まった。彼は封筒をテーブルに叩きつけ、司会者の位置に戻った。
 
やがて、ふらふらしながら、安元が舞台に上がってきた。那須清美とは、あるメンバーが病気療養を理由に脱退話が出た時、ABCへの加入が約束された娘である。「なす美」という愛称まで決まっていた。結局メンバーは戻りご破算になった。清美は納得いかず、ABCでなくてもアイドルとしてデビューさせるよう安元に訴えた。だが、安元は逆に彼女を威嚇し、セクハラまがいの行動にまで出た。全メンバーにはシカトするよう命令し、従わなければメンバー交代どころか、まともに世間を歩けなくしてやると脅した。清美は失意の中、自ら命を絶った。この話は全く表に出ていない。
 
壇上の安元が口を開いた。呻き声のようなか細い声で、「これで・・・終わり」。途端に大型スクリーンに例の49人のネット画像が流れ始めた。しかし今回の映像は顔が分からなかった娘にズームアップしていく。やがて、満面に笑みを湛えたなす美の顔が大写しになると、メンバーから異常な叫び声が次々と上がった。安元はテーブルにうっ伏している。
 
なす美の顔を見て、司会者も声を上げた。思わず脇を見ると、少し離れた所にアシスタントの女性が神妙な顔をして立っていた。
 
「キミ・・・」もう一度画面を見たが間違いない。同じ人物だ。なす美は縋るような眼差しで厚みのある封筒を司会者に手渡した。わずかに触れた手がとても冷たかった。「これを、どうかお願いします」。彼女は二、三歩下がり深々とお辞儀をした。そのままの姿勢で輪郭がぼやけ始め、やがて靄のように消え去った。中央の画面も同時に暗くなった。
 
会場が騒然とする中、司会者だけが違う空間にいるようだった。最後のなす美の表情を思うと、恐怖や驚きよりも悲しみの感情が込み上げてきた。彼は、表に何も書かれてない封筒をしばし見詰め、一度深呼吸し、真実が綴られている便箋を中から取り出した。

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【創作】ゴールドバンド

Go

※一般の方には全く意味を成さない表現が度々出ますのでご注意ください。

むかしむかし、タムラという青年が、幸せを呼ぶという伝説のゴールドバンドを探す旅に出ました。どんどん歩いていくと罠に掛かったワニに出会いました。大きな罠でしたが何とか助け出しました。 「助かったぁ。どうもアリゲーター」「それにしてもこの罠大きいね」「ワーナーは何でも捕まえるんだ。お兄さん、どこ行くんだい?」タムラはゴールドバンドの話をしました。「それは森に住むベアファミリーの親父なら知ってるかも知れんなぁ」

二人連れでベアファミリーの家を訪ねました。話を聞いたクマの親父はパラマウント・ベッドから起き上がり、枕元のキリン・ファイアーをぐいと呷ると(我ながらブッダ込みすぎ)妻と子供たちを見やりました。「しばらく父さんはルースターにするが大丈夫か?」長男が「安心シッティン・イン・ウィズ」と頼もしく答えました。

クマ親父はゴールドバンドに心当たりがある様子です。自分の車を出しました。ワニはあまり車に乗った事がないのかとりわけ喜んでいました。「やっほー!エクセロ全開!」デコボコ道をウェストバウンド/サウスバウンド。ながらかな下り坂はスーと楽しいドライブです。 「知り合いのウルフやコブラを誘おうか?」「いや、トリオだから意味がある」そんなこんなで、あるお城に辿り着きました。

「ここのキングの娘がゴールドバンドの持ち主らしいんだ」「名前は?」「アンナだ」「何となく懐かしい名前だ」 クマ親父は実は地方の名士で、どうにかアンナに会う事が出来た。「どこかでお会いしたかしら?」「私もそんな気がします。ところでアンナ姫はゴールドバンドをお持ちですが?」「沢山持ってるわ。一つぐらいなら譲ってエイスよ」キラキラ光るバンドを取り出すと、タムラの頭に巻き付けた。「頭に巻くのが一番効果があるのよ。そうそう、このゴールドワックスをかけるともっと効き目があるわよ。上からかけるわね」アンナ姫は持っていたボトルから液体を注いだ。「熱ちちちちち!」「あ、ごめんなさい!ホットワックスと間違えた!」慌ててワックスを払いのけようとするアンナとタムラの眼が合い、いつしかお互いの手が握られていた。二人の時間が止まった。

お城の外を、一羽のブルーノート、じゃないわブルーバードが飛んで行った。めでたしめでたし。 (おわり)

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店長!

「店長!お客様がパンツの補正受け取りに・・・ちょちょっ、店長!まさかそれ?何でそんなに短く、それじゃ半ズボンじゃないスか!エッ?子供の新入学の事考えたらこんななった!バカか、あんた!買う時も散々もめてたじゃないスか!あのタイプ、怒らせたら恐いですよ・・・ここは僕が時間稼いどきますから何とかして下さい!泣いてる場合かよ!恐くないと言えば嘘になります。でも、行くしかないっしょ!」・・・以上アパレル君でした。

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【創作】スーパーフライ~羊はそれを我慢できない

※お世話になってます『週間ドリームライブラリ』さんの三題話に沿って創ったお話です。お題は①ひつじ②くも③流行語で、流行語はa ありのままで b いいじゃないの c だめよ〜だめだめの中から一つ選ぶというルールです。初笑いとなりますかどうか・・・。

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雲の上の、そのまた上の、神さまだけが住んでいる世界。2014年も終わろうとする時、恒例の「干支引き継ぎ式」の準備が着々と進んでいた。

「おお、なかなか良い羊じゃ。いいじゃないの」目を細めているのは、引き継ぎ式総合管理担当の神さまだった。隣りで緊張しながらも嬉しそうなのは、下界から羊を連れてきた神さまだ。この行事は、神さま経験満一年を迎えた新米の神さまが、ゆく年くる年の動物を集めてくる事から始まる。

「ところで馬はまだか?」
「はい、もう下界に下りてだいぶ経ちますね。ちょっと見てきます」
「頼む。あいつは気が弱いところがあるからなぁ」

先輩神さまが、馬を探しに行った新米神さまを探しに行く事に。神さま探知センサーがあるから大丈夫。とある牧場ですぐに見つかった。

「おい、どうした?」
「あ、先輩。困ってるんです。ここにいる、引退した競争馬を連れて帰ろうとしてるんですが、私を神さまだと信じてくれないんです」

すると、一頭の馬が、うさん臭そうな顔つきで近づいてきた。「おやおや、仲間を呼んだのか?」
「おい、どうやったらついて来るんだ?」
「アンタたちが信頼できると思えたらな。俺も天下のスーパーフライだ。GⅠレース無敗の勇者!種馬になっても良い仕事してるぜ!ヒヒ~ン!」
「エッ?名前何だって?」
「スーパーフライさ!」
「スーパードライ?」
「ビールかよ!」
「スーパーのフライ?」
「見切り品は安いのかよ!ヒヒヒ~ン!面白えヤツだ、気に入った。行ってやろうじゃねえか!」

呆気にとられている新米神さまの耳元に、先輩神さまがそっと囁いた。「こういう屈折したタイプは、無理に説得しようとせず、自然な流れでありのままに会話すれば良いんだよ」

無事、神さまの世界に着いた一行。既に宴の準備が進められている中、スーパーフライは、先客の羊がいる控室に案内された。
「やぁ、俺はスーパーフライだ。アンタの名前は?」
「ジャッキー・ブラウン」
「えらくご立派な名前だな。ところで、ジャッキー、食事の用意がされてるみたいだけど、まさか俺たち、馬刺しとジンギスカンにされるんじゃないだろうな?」
「まさか、そんな、人間みたいな事するわけないじゃない!もし、毎年やってるんだったら、辰から巳の時はどうするのよ」
「あ、確かに食えねえな。子と申もキツイ」

スーパーフライの心配は杞憂に終わった。単なる宴であり、彼らもその恩恵を十分に味わった。しかし、困った事に、すっかり満腹になった為、スーパーフライの種馬気質がよみがえってきた。可愛いお尻を振りながら前を歩くジャッキー・ブラウンに、そそくさと近寄っていった。

「よぉ、ジャッキー。これも何かの縁だ。二人きりでゆっくりしないか?」
「ダメよ!ダメダメ!」
「まぁそう言わずに、ここちょっと寒くないか?暖まろうぜ」

次の瞬間、ジャッキーは後ろ足で立ち上がって素早く振り返り、どこから出したのか、ピストルをスーパーフライに向けた。

「少しも寒くないわ」カチャリ。

一瞬で事情を察知したスーパーフライの逃げ足は、生涯最高のスピードだった。

<この小説はフィクションであり、登場人物、馬、羊、団体名等は全て架空のものです>

(おわり)

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【創作】レスト・イン・ピース(2)

♪前回分

http://hajibura-se.cocolog-nifty.com/blog/story/index.html

...

気持ちの悪い夢を見た・・・。

最初に組んだバンドの連中と演奏していた。ドラムはボウ。キース・ムーンがアイドルで、とにかく手数が多かった。でもそのおかげでパンクっぽい勢いがついてたな。ベースの次郎は合わせるのが大変そうで、よく喧嘩していた。でも、相性は最高だったな。絡み合った時のグルーヴは中々のものだった。俺も勉強になった。

ギターは・・・アイツ、名前何だっけ?すぐに辞めたんだよな。あ、星野だ。音楽のセンスはあったけど、ロックンロールのセンスが無かった。変な話だが、楽譜通り、あるいは聴いた曲通り、キッチリ弾き過ぎるんだ。味や臭いが薄いんだよな。あのバンドでは俺もギターをよく弾く格好になった。星野にしてみれば面白くなかったかもな。

夢の中では、星野のリフの揺れが抜群だった。俺もギターを手にしようとしたが手元にない。他のメンバーを見ると、3人固まって楽しそうに演奏している。俺の方を見もしない。星野が、過去最高の“間”で粋な音を響かせ始めた。

よし、それならハープだ。と思ったが、革ジャンの内ポケットは空。とにかく歌おうと、マイク・スタンドを引き寄せた時、突然吐き気がした。腹の中から何かが上がってくる。それがハープなのは夢だから分かっていた。俺は自分の両手を口の中に突っ込み、引っ張り出そうとした。ところが、逆に腹の中へ掃除機のように吸い込まれていった。両腕から腰、そして両脚・・・。

俺は、ブラック・ホールのような俺自身の身体に呑み込まれ、現在の、意識だけの姿になった。夢はそう語っていた。何の解決にもなりゃしないけどな。もっとも、何かが解決、あるいは好転するとも思えない。

夢を見たのはこんなになってから初めてだが、度々“眠って”は居た。きっとその内眠りから覚めなくなるに違いない。ただ、それだけ。納得はしてないが覚悟はしている。死んだも同然の人間が本当に死ぬだけの話だ。

「こんにちは、ジャックさん」
  妄想の姫か。
  「お見舞いの方がお見えです。こっちですよー」

「ジャック!」
  「・・・リズ?」

罪な妄想だ。なんで、彼女が出てくるんだ。

(つづく)

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【創作】レスト・イン・ピース(1)

【創作】レスト・イン・ピース(1)

自分が何処にいるのか判らない。病院のベッドの上だとは思う。

看護婦が時々来るからだ。でも、医者も見舞客も一切来ない。

最近は、看護婦は俺の想像の産物ではと思うようになった。

病院に居るんだと、自分自身に言い聞かせたいのかも知れない。

何も見えないし、触る事も出来ない。そもそも、

自分の身体自体を自覚出来ていない。

自分が物質的に存在しているのか疑わしいのだ。

聴覚と嗅覚だけはある。しかし、それも空想なのかも知れない。

当然だが声も出ないので、相手に思いが伝わらない。

意識だけは有り、こうやって、あれやこれやと考えてはいる。

既に俺は死んでいて、自分でそれに気付いていないのだろうか?

いやいや、死んだら意識も無くなるんじゃないか?それとも、

脳だけが活動してるってわけか?
所詮、

人間死んだらどうなるかなんて誰も分からないんだろうから、

俺も世間的には死んでるのかも知れない。

いくら考えても結論は出ない。俺はとにかく、

この状況で居るしかないんだろう・・・。

「こんにちは」
いつもと違う声だ。
「今日から担当になりました。黒石あさみと言います。

宜しくお願いします」
看護婦が変わったのか。ご丁寧な妄想だ。

「月村さん、ミュージシャンだそうですね。

紅白にも出た事があるんですってね」
一回きりさ。あれはドラマの主題歌に使われたからな。まぁ、

紅白なんかどうでも良い。俺の舞台はライヴ・ハウスだ。

客が手を伸ばせば届くような距離で、唾や汗が飛び交い、

お互いの臭いまでをも感じるような、

そんな世界で俺は演奏し歌ってきた。

「私の兄がロックを聴いてて、

ジャックは本物だって言ってましたよ。

ジャックさんて言うんですね、月村さん」

ジャックにさんを付けたらおかしいだろ、へへ。まぁ良いや、

知ってくれてるだけで嬉しいよ。ありがとさん。

「はーい!ありがとうございましたー!」

そりゃ何のお礼だ?

ライヴ・ハウスといえば、自分がこんな状態になる直前、

ギーちゃんの店で演奏していたのを思い出した。たぶん、

あの時だ!

「ジョニー・B・グッド」でダック・

ウォークに入るタイミングがずれたんだ。

そのまま強引にやってしまえば良かったけど、

もう一度立ち上がろうとして、バランスを崩したんだ・・・で、

そこから先の記憶が無い。

でもなぁ、それが生きていた最後の記憶とも思えないんだ。

存在は感じなくても、頭は働いてるって思ってたけど、

それだって怪しいもんだ。

まったく!どうしたんだ、俺。

(つづく)

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【創作】今日子(3)

♪前回分まで

http://hajibura-se.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-8fb5.html

月曜日は曇っていた。まるで、墨が滲んで広がったような、もの悲しい気分になる空だった。僕は、どこも悪くないんだけど、かすかな胸のつまりを、朝起きた時から感じ続けていた。いや、正確に言えば、金曜日に今日子の家を出てからずっとだ。

今日子は、これまでも度々休んでいたし、担任の先生も特別な事は言わなかった。当然ながら、クラスの皆も、いつものように明るく振る舞っていた。

「どうした?腹でも痛いか?」と山倉が聞いてきたくらいだから、僕の様子は変だったのかも知れない。「いや、眠い」と適当に応えて、取り止めもない話をする内に、僕の気持ちも少しは晴れていった。でも、心の奥の曇り空は、分厚くはびこっていた。

その後、今日子は更に休み続けた。さすがに、クラスの誰もが気にし出し始めた。天気は日を追うごとに晴れていったが、クラスの雰囲気は、徐々に、翳りの中に封じ込まれていった

日曜日。外に出掛ける気にもなれず、昼飯の後にCDを次々と聴いていた。棚に並んだCDの上に載せたままの黄色い袋は、常に視界に入っていた。

いつになったら返せるだろうと考えていたら、山倉から電話が入った。あんなに沈んだアイツの声は、後にも先にも聞いた事がない。僕も全身の力が抜けた。身体が溶けて床に流れていくようだった。

今日子の死。とても重い事実なのに、現実として気持ちに入って来ない。予感していた事が実際に起きたのに、まだ予感の中に居続けようとしている自分が意識出来た。

葬儀の日・・・クラスメイト達の列は、今日子が眠る棺へと淡々と進んでいた。棺の脇には、白い布を底に敷いた長方形の箱が置いてあり、皆がそこに今日子からの“預り物”を返していた。誰が言い出したのかは憶えていないが、僕にも事前に連絡があった。

ぬいぐるみ、ペンケース、手帳、本、・・・男子も女子も、皆、何かしら手にしていた。僕も例のCDを持って来ていた。

すすり泣く者もいたが、だいたいにおいて、皆冷静だった。悲しみよりも、今日子にお礼を言いたい気持ちが先に立っていたんじゃないだろうか・・・。

棺の中の今日子は、ひと回り小さく見えた。縮んだ感じだ。いつもの眼鏡を掛けていたが、いつもの笑顔はなく、ひっそりと目を閉じていた。

僕は、遺体を見るのは初めてだった。まるで生きているようだと言う人もいるが、あれは嘘だ。少なくとも今日子には当てはまらない。棺の中に眠る今日子、いや、眠ってもいない、横たわっている今日子は、生きている今日子と全然違う。

彼女の時間は止まった。僕達の時間は動いている。難しい理屈は組み立て切れないが、今日子の時間を僕達はこれからも共有できる気がしていた。そうしたかった。

僕達が生きる事は、今日子が生きる事でもあるんだ。

(つづく)   

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【創作】悪い星の下に(1)

カクは、うたた寝の気持ち好さにとろけはじめていた。普段でも眠そうに見える顔が、一段と情けなく崩れている。思い出したように首が揺れると、安物の座椅子が短く音を立てた。

さし向かいに座っている鉄は、湯呑み茶碗に注いだ日本酒を、時々口元に持っていく。だが、味わっては飲んでいない。彼の気持ちは、折り畳んだ自分の携帯電話に向いていた。静まった部屋の中、座椅子が軋むたびに、胸の内に収めていた予感が意識に上った。

電話を待っているのは、ここ数日共通した事だが、今夜かかってくる可能性が高い。その電話は、彼の行く末を大きく変えるものだ。ただしそれは、恩人の死と引き換えにもたらされる。恩人は末期癌だった。しかし、強く生きた。力みもなければ、諦観の虜にもならず、積もった雪が徐々に融けていくように、最期の時を迎えていた。自然体で運命を受け入れる、彼らしい態度だった。

鉄はヤクザ者だ。しかし、恩人は一般人で、喫茶店のマスターだった。妙な取り合わせだが、チンピラだった鉄に、人間性を目ざめさせた人物だといえる。そのキッカケも妙だった。ふたりを繋いだのはブルースという音楽。鉄は、ほんの雨宿りのつもりで入った喫茶店で、心を騒がせる音楽に出逢い、少しずつ変わっていった。ヤクザの自分は否定されるが、運命に従う事に鉄は慣れていた。

「ジャスト・ア・リトル・ビット」のメロディーが唐突に鳴った。鉄の携帯電話だ。座椅子が一度大きく軋み、目を覚ましたカクが、不安そうに鉄を見やった。鉄は上げかけた茶碗をゆっくり下ろし、携帯を開いた。恩人の弟からだ。

「はい」
「あ、鉄さん。たった今兄が亡くなりました。穏やかな最期でした。色々お世話になりました。これから又、宜しくお願いします」

鉄は、淡々とした語り口を聞きながら、自分の頭の中が靄に包まれていくのを意識した。やがて涙が静かに頬を伝い始めた。

「ご愁傷さまです。最後のお別れに間に合うかな?」「はい、告別式は日曜のお昼になります。お迎えには行けませんが宜しく。実家は店の近くです。店に案内の貼り紙をしておきます。後の事はお会いしてから」

恩人の弟は、兄と鉄との約束が実現するよう、親身になって動いていた。鉄が恩人のマスターから頼まれていたのは、喫茶店を引き継ぐ事だった。遺言化もされている。しかし、鉄の素性は判らぬにせよ、いきなり赤の他人に店を任せるのは実家としては釈然としない。そこで、弟が経営を引き継ぎ、鉄に働いてもらう形を取った。兄と親身にしていた常連とだけ説明している。

ウィークリー・マンションも手配し、既に主な荷物は運び込んでいる。ここしばらく、身ひとつに近い状態で、子分のカクのマンションに居候していた状態だ。

「兄貴!」会話が終わったとみるや、カクは身を乗り出し、不安そうな表情を見せた。「いよいよですか」。

「ああ。明日親父さんに挨拶に行く。お前にも世話になったな」いつも余計な事ばかり喋り、鉄にたしなめられているカクが無言で俯いている。

ふたりが所属する組はやがて消滅する。組長の息子が営む不動産業が軌道に乗り始めているのだ。今、鉄が組を離れれば、“親父さん”の決断は早まるだろう。不器用なカクは真っ当な勤めに自信がない。鉄の運命を変える電話は、カクの人生にも及ぶ問題なのだ。

それ以前に、カクにとって鉄は任侠の手本である。田舎に帰って喫茶店を開くと聞いた時は、足元がすくんだ。次第に、鉄の人生を左右する男の大きさを感じるようになったが、それは自分を納得させようという意識からだった。日に日にカクの気持ちは萎んでゆく。鉄はそれが判っていながら、今後のカクの為に距離を置いた。同時にそれは自分の為でもあった。

(つづく)   

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