Terrell

テレル『テレル』

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一言でいえばしなやかなヴォーカル。ジョニー・ギルやグレン・ジョーンズの並びに上げられるような本格派です。今回このアルバムのライナーを書いて居られるのは、私がいつも頼りにしている石島春美さんで、冒頭に現代R&B界における「歌えるシンガー」について書かれています(次の段落の「」部分は石島さんの文章をそのまま載せたものです)。

曰く、「時流はヒップホップのトラックに乗って歌えるシンガーが求められ」「ゴリゴリと歌い倒すことは必ずしも重要でなくなり」本格的ヴォーカリストはゴスペルに転向するか、巡業暮らしか、インディー・レーベルで生きながらえる形になってしまってます。「今歌えるシンガーを聴きたいのなら、ビルボードのチャートを眺めている場合ではない。探す手間さえ惜しまなければ、素晴らしいシンガーの作品に出会えることはそう難しくはないのだから」・・・。

このテレルのアルバムも<スロウ・ダウン>というインディー・レーベルが元で、本人がプロデュースもこなしています。今風の音創りの前に、自らの「ヴォーカル力」を正直に見せ付けた一作と思います。たとえ、ダンサブルな曲が無くても(クラブで使えなくても)、美メロ曲が無くても、彼の存在感は証明されています。今回日本盤として出され、多くの人の耳に掛かるのは他人事とは言え嬉しくなります(私も手に入れやすかった訳だし)。

それでも、最近は、タワーで試聴なんぞしていると、「歌えるシンガー」は増えてきたような気もします。流行プロデューサーも「黒人音楽の伝統の部分」を大切にしており、本格派が第一線に浮かび上がってきそうな感じもします。しかし、まだまだシーンの水面下に本格派は潜んでいそうです。石島さんの様な優れたナビゲーターをしっかり追いかけて行こうと思います。あ、「手間」かけなきゃダメか・・・頑張ろうっと。

①イントロ・・・グラミー授賞式を模したものだそうです。

②メイクス・ノー・センス・・・挨拶代わりの一曲。声が林立する感じで、一発で強烈な印象を聴く者に与えます。出だしだけ聴くと、デスチャとかの曲みたい。一応彼なりの最近の流行に対するアプローチかな?しかし、彼の声を聴くのに夢中で曲のフレーズは少々どうでも良くなります。

③アイ・チーティッド・・・R・ケリーの曲みたいな出だしで、ヴォーカルの強烈さよりコーラスの美しさが印象に残ります。

④オンリー・ワン・・・これもコーラスがきれい。

⑤シンキング・アバウト・ユー・・・アルバム全体の中で、やや盛り上げかけるが頂点までは持っていかない感じ。基本フレーズを歌う声にかぶせて熱く搾り出すように歌うヴォーカルが聴き所。

⑥ベイビー・ユー・ドント・ラブ・ミー・・・新しいリズムは取り入れてもリズムに埋没せずに歌声が際立ちます。派手に盛り上がらない曲でも内に秘めた力強さが伝わる感じです。メアリー・J・ブライジの男版みたい・・・歌の上手さは勝ってますが。

⑦ザ・ワン・ラブ・・・ヴォイス・モジュレーターを随所に使いますが、その使い方が上手い。歌声とモジュレーターの境目が何とも言えない心地良さでつながります。「ヴォーカル・アレンジメント」も本人がやってます。相当「声を扱うセンス」が有りますね。曲を創るセンス、トラックを創るセンス、楽器と絡むセンス等より先ず「声」に対するセンスを感じます。

⑧マター・オブ・タイム・・・静かめなミディアムのバラードですが、曲より「声」をどうしても追っかけちゃいますねえ。サビの部分でコーラスの中を自由自在に声が舞います。モジュレーター使いも決まってる。

⑨ハード・フォー・ミー・・・バラードが続きます。K-Ci&JoJo辺りを思い出しますが、ハードに盛り上げず、じわじわと盛り上げていきます。もうちょっと長いと良かったんじゃなかろうか。

⑩ネヴァー・ステイ(インタールード)・・・ベース音の強調が面白い。その中をコーラス中心に声が漂います。

⑪ウィズ・ミー・・・リズムが面白いけど、時代の先端の物よりちょっと旧めな感じです。ここでは女性コーラスが初めて入ります。

⑫エヴリシング・・・③辺りで使った「水溜りに滴が落ちるような効果音」を控えめに、しかし効果的に使い、モジュレーターも見事な使い方です。後半、アカペラになってのコーラスの着地は美しい。

⑬アウア・ラブ・トゥナイト(インタールード)・・・⑫に続き、アカペラ・コーラスで続きます。女性も入ってます。元々ゴスペルの経験が有る人だけに、ゴスペル的な部分は大いに感じますが、ここではサラッと披露してます。

⑭ラブ・・・アルバムも大団円を迎えつつあり、やや懐がもう一つ深くなったような(しかし大仰ではない)盛り上がりを見せます。

⑮カム・インサイド・・・前の曲に比べ落ち着きました。それにしてもスムーズさ、シャウト、こぶし回し、囁き、何でも来いって感じです、この人。

⑯ゴスペル・インタールード:(フイーチャリング・ヴァネッサ・ベル・アームストロング)・・・お懐かしや、ヴァネッサ・ベルが受話器の向こうからゴスペルを一くさり。

⑰アイ・シャル・・・⑯に呼応してか、ゴスペルのアカペラ。最後にコーラスをまぶして静かに終了です。

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