【試聴記】ホイットニー・ヒューストン『アイ・ルック・トゥー・ユー』
http://www.whitneyhouston.com/us/homehttp://www.hmv.co.jp/product/detail/3625546基本的にアーティストの“悪口”は書きたくない(し、悪口を思い付く対象もさほどいない)ので、“応援”と捉えてほしいです。
ホイットニー7年ぶりの一枚は、途中で聴くのを止めてしまいました。その時点で文章を書き進めたのですが「やっぱり最後まで聴こう」と思い中断した「ソング・フォー・ユー」から後日聴き直しました。ところが中断した所から手前と先で、ある程度印象が変わる事となりました。
ジャケットに見る彼女の容貌は、ふっくらした分顔の下半分が叔母のディオンヌ・ワーウィックに似てきた感じ。好い老けぐあい(歳の重ね方)だと思い、勝手に、落ち着きの有る歌声を連想してしまいました。加えてプロデューサー、ライター陣に、ダイアン・ウォーレン、スターゲイト、ウィル・アイ・アムらが参加という事で、期待も一層募ったものです・・・。
結果はどうもシックリ来ませんでした(前半)。何気なく聴けば落胆する事もないんでしょうが、この人の場合そうもいかないでしょう。
もっとも、私は嘗てのホイットニーにも殆んど“ブラックネス”は感じませんし、特別彼女のファンという訳でもないです。それでも少々気になるのは、やはり彼女の背景。歌がヒットしなくて消えた訳ではなく、私生活のトラブルから一線を退いた事情が有り、音楽ファンの一人として残念な思いでした。それだけに“復活”と聞くついつい気になるのです。
彼女に対する私の認識は「優れたポップス歌手」です。現代の歌手で言うとセリーヌ・ディオンみたいな感じですかね。最大の魅力は、やはり突き抜けるような歌声でしょうが、今回のアルバムにはそういった爽快感はないし、かと言ってジャケ写でイメージしたような貫禄も感じません。所々声がしゃがれていたりもします。
曲は、かつてのホイットニーが取り上げそうなタイプのものが並んでいます(前半)が、本人自身が用意された枠からズレている気がします。「ソング・フォー・ユー」も歌っていますが、これだけ手垢の付いた曲は、それこそディオンヌ・ワーウィックのようにテクニック&スピリットに長けた歌手でなければ心に届きません。途中でアレンジが変わりゴスペル調になるのですが、時既に遅しの感有りでした。
http://www.youtube.com/watch?v=mdEEwnlaF84面白かったのは、エイコンが参加した一曲。ヒップホップ感覚がキツ目でなく、彼女に似合ってると思います。昔に戻ろうとせず、現代R&Bの潮流に彼女らしく乗った方が好いような気がするのです。
http://www.youtube.com/watch?v=G3BGUC73SKE冒頭にも書きました通り、アルバム後半はズンズンドンドンとクリアなビートに乗って、あまり声を張り上げず曲に絡んできます。R&Bの世界が成立しています。この感覚がイイですね。特に「Worth It 」はこのアルバムの中で一番好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=lP0Go-1vTZo私が黒人音楽愛好者だからR&B寄りのものを支持するという一面も有りますが、今のホイットニーにはこの攻め方が似合っていると思うんですよね。しかし、たぶん本人は嘗てのテク満載の歌姫的自分を想起しているのではないでしょうか?一般的にもそこに食いつく人が多いとは思います。そういう意味ではこの次に出るアルバムがどんな「表情」を見せるのか、といった部分が私は気になります。
彼女には“復活”より“変身”を目指して欲しいのです。
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